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定年は何歳か、会社はどこまで雇い続ける義務があるか:高年齢者雇用安定法を条文で読む

「定年は65歳になった」と言われることがあります。一方で、勤め先の就業規則を見ると60歳と書いてある。どちらが正しいのか、という質問がよく出ます。

答えはどちらも正しいです。法律が定めているのは定年の年齢そのものではなく、下限と、その先に何を用意しなければならないかだからです。

この記事は2026-09-06 時点の公表資料の整理です。実際の扱いは勤務先の就業規則によります。個別の判断は勤務先または最寄りのハローワークにご確認ください。

条文が決めているのは3段だけ

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)は、e-Gov 法令検索(昭和46年法律第68号・2026-09-06 確認)で全文を読めます。関係するのは3か条です。

第8条:定年を定めるなら60歳以上

事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、当該定年は、六十歳を下回ることができない。ただし、当該事業主が雇用する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務に従事している労働者については、この限りでない。

「定年を置け」とは書いていません。 置くなら60歳を下回れない、という下限の定めです。ただし書きで、省令が定める一部の業務は例外になります。

第9条:65歳までは、3つのうちどれかが義務

定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。 一 当該定年の引上げ 二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入 三 当該定年の定めの廃止

「講じなければならない」=義務です。定年を65歳に上げてもよいし、60歳のまま継続雇用制度を置いてもよい。会社が選べる形になっています。

同条2項は、継続雇用の受け皿をグループ会社(特殊関係事業主)にしてもよいことを定めています。定年後に籍が別会社へ移る形があるのは、この条文が根拠です。

第10条の2:65歳から70歳までは「努めなければならない」

定年(六十五歳以上七十歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主又は継続雇用制度(中略)を導入している事業主は、その雇用する高年齢者(中略)について、次に掲げる措置を講ずることにより、六十五歳から七十歳までの安定した雇用を確保するよう努めなければならない。ただし、当該事業主が、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合の、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の同意を厚生労働省令で定めるところにより得た創業支援等措置を講ずることにより、(中略)七十歳までの間の就業を確保する場合は、この限りでない。 一 当該定年の引上げ 二 六十五歳以上継続雇用制度(その雇用する高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後等も引き続いて雇用する制度をいう。以下この条及び第五十二条第一項において同じ。)の導入 三 当該定年の定めの廃止

語尾が「努めなければならない」に変わります。9条の「講じなければならない」との差がそのまま、65歳と70歳の間にある段差です。各号の3本立て(引上げ・継続雇用制度・定年廃止)は9条と同じ形ですが、二号が「六十五歳以上継続雇用制度」になっています。

雇用ではない選択肢(創業支援等措置)を置いているのは、10条の2第1項の「ただし書き」です。 過半数組合または過半数代表者の同意を得たうえで創業支援等措置を講じる場合は、各号の措置によらなくてよい、という組み立てになっています。

そのうえで同条2項が、創業支援等措置の中身を定義しています。1号が高年齢者本人の創業に対する業務委託等の契約、2号が社会貢献事業に従事する機会の提供です(いずれも労働契約を除く、と明記されています)。70歳までの措置には「雇われない働き方」が正面から入っているのが65歳までとの違いです。

実際の会社はどう選んでいるか

厚生労働省が公表した令和7年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果(令和7年12月19日公表・2026-09-06 確認)は、常時雇用する労働者が21人以上の企業237,739社からの報告(令和7年6月1日時点)をまとめたものです。

65歳までの雇用確保措置(9条・義務)

実施の内訳 企業数 割合
継続雇用制度の導入 154,505社 65.1%
定年の引上げ 73,585社 31.0%
定年制の廃止 9,367社 3.9%

実施済みの企業は99.9%(変動なし)。義務なので、ほぼ全社が何かしらを置いています。

定年年齢そのものの分布

定年 企業数 割合
定年制を廃止 9,367社 3.9%
60歳 147,864社 62.2%
61〜64歳 6,923社 2.9%
65歳 64,765社 27.2%
66〜69歳 2,783社 1.2%
70歳以上 6,037社 2.5%

いちばん多いのは今も60歳定年で、62.2%です。「定年は65歳」という言い方が実態とずれて聞こえるのは、これが理由です。65歳以上定年(定年制廃止を含む)は34.9%で、前年から2.3ポイント増えています。

70歳までの就業確保措置(10条の2・努力義務)を実施済みの企業は34.8%(前年比2.9ポイント増)。うち創業支援等措置を導入したのは132社(0.1%)にとどまります。努力義務の段では、まだ3社に1社です。

「希望者全員」になったのは令和7年度から

継続雇用制度には、長く経過措置がありました。同じ集計結果の注記が、その終わりをはっきり書いています。

継続雇用制度とは、現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度であり、平成24年度の法改正により、平成25年度以降、制度の適用者は原則として「希望者全員」を対象としている。ただし、平成24年度までに労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた企業においては、当該基準を適用できる年齢を65歳まで段階的に引き上げる経過措置が令和7年3月31日まで適用されていた。本経過措置は令和7年3月31日をもって終了し、令和7年度からは、「希望者全員」の65歳までの雇用確保について全面的な義務付けがなされている。

経過措置の最後の年に何が起きたかも数字が出ています。基準を適用できる年齢(64歳)に到達した29,630人のうち、

  • 基準に該当し引き続き継続雇用された者 92.1%
  • 継続雇用の更新を希望しなかった者 6.6%
  • 継続雇用を希望したが基準に該当せず終了した者 1.3%

「希望したのに基準で外れた」のは1.3%でした。そして令和7年度からは、この選別自体が無くなっています。

手続きの上では「定年」は独立した離職理由

ハローワークに提出する雇用保険被保険者離職票-2の記入例(様式第6号(2)・2026-09-06 確認)を見ると、⑦離職理由欄の大分類は「1 事業所の倒産等によるもの」「2 定年によるもの」「3 労働契約期間満了等によるもの」「4 事業主からの働きかけによるもの」「5 労働者の判断によるもの」「6 その他」に分かれています。

定年は、解雇でも自己都合でもない独立の区分です。しかも「2 定年によるもの」の中で、定年後の継続雇用を「希望していた」か「希望していなかった」かを選ぶ形になっています。ここの丸の位置で、その後の扱いが変わります。離職票の見方は 会社都合を離職票でどう確かめるか にまとめました。

確認する順番

  1. 就業規則の定年の条文を読む(何歳か、継続雇用の規定があるか、受け皿が別会社か)
  2. 65歳までは義務、65歳から70歳までは努力義務という段差を頭に入れる
  3. 定年後に働き続けるかどうかを、離職票に丸を付ける前に決めておく
  4. 辞める側に回るなら、退職時に受け取る書類の一覧退職後の健康保険・年金の手続き を先に見ておく
  5. 送り出す側に回るなら、継続雇用で同じ職場に残る場合があるため 定年退職の人を送るとき で先に確かめる

日付の逆算が要るときは 退職日の逆算カレンダー が使えます。

まとめ

  • 8条が決めているのは定年の下限が60歳であること。定年を置くこと自体は義務ではない
  • 9条により、65歳までの雇用確保は義務(定年引上げ・継続雇用・定年廃止のいずれか)
  • 10条の2により、65歳から70歳までは努力義務。各号は9条と同じ3本立て(引上げ・65歳以上継続雇用制度・定年廃止)で、業務委託などの創業支援等措置は1項ただし書き(過半数組合等の同意が要る。中身の定義は2項)
  • 実態は60歳定年が62.2%で最多。65歳以上定年は34.9%
  • 70歳までの就業確保措置の実施は34.8%
  • 対象者を選別できた経過措置は令和7年3月31日で終了し、65歳までは希望者全員が対象

「定年で終わりかどうか」は、法律ではなく勤務先がどれを選んだかで決まります。読むのは条文ではなく、就業規則の定年の条です。

出典(すべて 2026-09-06 に確認)

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