定年前に確認する企業年金とiDeCo:受け取れる年齢は「加入していた年数」で決まる
定年前にまとめて確認しておきたいのが、確定拠出年金をいつから受け取れるのかです。「60歳から」と覚えている方が多いのですが、条文はそう書いていません。60歳で受け取れるのは、通算加入者等期間が10年以上ある人だけです。
10年に足りない場合、受給できる年齢は後ろにずれます。しかも、ずれ方まで条文に表で書かれています。
この記事は2026-09-06 時点の公表資料の整理です。個別の残高・受給可能時期は運営管理機関または勤務先にご確認ください。
受け取れる年齢は年数で決まる
確定拠出年金法(2026-09-06 確認)第33条1項が、企業型年金の老齢給付金の支給要件を定めています。
企業型年金加入者であった者(中略)であって次の各号に掲げるものが、それぞれ当該各号に定める年数又は月数以上の通算加入者等期間を有するときは、その者は、厚生労働省令で定めるところにより、企業型記録関連運営管理機関等に老齢給付金の支給を請求することができる。ただし、企業型年金加入者であった者であって六十歳以上七十五歳未満のものは、通算加入者等期間を有しない場合であっても、企業型年金加入者となった日その他の厚生労働省令で定める日から起算して五年を経過した日から企業型記録関連運営管理機関等に老齢給付金の支給を請求することができる。
各号は次のとおりです。
| 請求する時の年齢 | 必要な通算加入者等期間 |
|---|---|
| 60歳以上61歳未満 | 10年 |
| 61歳以上62歳未満 | 8年 |
| 62歳以上63歳未満 | 6年 |
| 63歳以上64歳未満 | 4年 |
| 64歳以上65歳未満 | 2年 |
| 65歳以上 | 1月 |
加入が遅かった人ほど、受け取れる年齢が後ろになります。 ただし書きにあるとおり、60歳以上75歳未満で加入した場合は、通算加入者等期間が無くても加入から5年を経過した日から請求できます。
同条2項は、通算加入者等期間に企業型年金加入者期間・運用指図者期間・個人型年金加入者期間・個人型年金運用指図者期間を合算すると定めています。ただし括弧書きで「その者が六十歳に達した日の前日が属する月以前の期間に限る」とされており、60歳より後の期間は原則として通算されません。
請求しないまま放置した場合の定めもあります。第34条です。
企業型年金加入者又は企業型年金加入者であった者(当該企業型年金に個人別管理資産がある者に限る。)が前条の規定により老齢給付金の支給を請求することなく七十五歳に達したときは、資産管理機関は、その者に、企業型記録関連運営管理機関等の裁定に基づいて、老齢給付金を支給する。
75歳が終点です。iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)のiDeCoの加入資格・掛金・受取方法等(2026-09-06 確認)も、個人型について同じ形を説明しています。
75歳までに受給の請求をしていただく必要があります。(請求されなかった場合には、法務局に供託されます)
掛金を出せるのは65歳になるまで
iDeCo公式サイトのiDeCoってなに?(2026-09-06 確認)は、拠出できる期間をこう書いています。
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、自分が拠出した掛金を、自分で運用し、資産を形成する年金制度です。掛金は65歳になるまで拠出可能であり、60歳以降に老齢給付金を受け取ることができます。
根拠は確定拠出年金法第62条1項です。個人型年金加入者になれるのは、国民年金の第1号・第2号・第3号被保険者と、国民年金法附則5条1項による任意加入被保険者に限られています。iDeCoの加入資格は、公的年金の被保険者であることに紐づいているということです。
ここで定年後に効いてくるのが、iDeCo公式サイトの次の注記です。
国民年金の第2号被保険者 ①会社員や公務員等の厚生年金の被保険者(注)の方です。 (注)65歳以上の厚生年金被保険者で、加入期間が120月以上の方(老齢年金の受給権がある方)は国民年金の第2号被保険者ではありません。
65歳を過ぎて再雇用で働き続けても、この注記に当たる人は国民年金の第2号被保険者ではなくなるため、iDeCoには加入できません。 「働いている間は続けられる」とは限らない、ということです。
ここで括弧書きを落とさないことが大事です。注記は「加入期間が120月以上の方」に(老齢年金の受給権がある方)を並べています。これは厚生年金だけの加入月数を数えた話ではなく、老齢年金の受給権があるかどうかを指しています。国民年金だけの期間や合算対象期間を含めて受給資格を満たしている場合があるので、厚生年金の加入月数だけを数えて判断しないでください。
同条2項は、次の2つに当たる人を加入者としない旨も定めています。
一 個人型年金の老齢給付金の受給権を有する者又はその受給権を有する者であった者 二 国民年金法又は厚生年金保険法による老齢を支給事由とする年金たる給付その他の老齢又は退職を支給事由とする年金である給付であって政令で定めるものの受給権を有する者
1号がiDeCo自身の老齢給付金、2号が公的年金の老齢給付です。老齢年金を繰上げ受給すると2号に当たり、そこでiDeCoの拠出は終わります。 iDeCo公式サイトも「iDeCoの老齢給付金を受給した場合は掛金を拠出することができなくなります」と書いています。
通算10年に足りているかを、定年前に確かめる
iDeCo公式サイトの記述です。
60歳から年金資産を受け取るには、60歳になるまでにiDeCoに加入していた期間等(確定拠出年金の通算加入者等期間)が10年以上、必要です。通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受給可能となる年齢が繰り下げられます。 ※ 60歳以上で初めてiDeCoに加入した方は、通算加入者等期間を有していなくても加入から5年を経過した日から受給できます。
確かめるのは残高ではなく年数です。転職で企業型からiDeCoへ移換している場合、期間が通算されているかどうかで受給開始年齢が変わります。移換を放置していた場合の扱いは 退職後6か月放置すると企業型DCはどこへ行くのか にまとめました。
受け取り方は、iDeCo公式サイトによれば一時金・年金(5年以上20年以下の有期年金)・両者の組み合わせの3つで、受給開始の時期は75歳になるまでの間で選べます。
退職金と同じ年に受け取ると控除が重なる
一時金で受け取る場合、退職金と同じ枠で課税されます。国税庁のNo.2732 退職手当等に対する源泉徴収(令和7年4月1日現在法令等・2026-09-06 確認)は、前に受け取った退職手当等がある場合に重複期間の控除額を差し引くとしたうえで、対象範囲を次のように定めています。
ロ 前年以前9年内に確定拠出年金法に基づく老齢給付金として支給される一時金(令和8年1月1日以後に支払を受けたものに限り、上記(1)の「前年以前に支払を受けた退職手当等」を除きます。)の支払を受けた場合(ハの場合を除きます。) 次の退職手当等 (イ) 令和8年1月1日以後に支払を受けた退職手当等であって前年以前9年内に支払を受けたもの (ロ) 令和8年1月1日前に支払を受けた退職手当等であって前年以前4年内に支払を受けたもの ハ 前年以前19年内に退職手当等(上記(1)の「前年以前に支払を受けた退職手当等」を除きます。)の支払を受け、本年中に確定拠出年金法に基づく老齢給付金として支給される一時金の支払を受ける場合 前年以前19年内に支払を受けた退職手当等
確定拠出年金の一時金が絡む場合、遡る期間は4年内ではなく9年内・19年内になります。 ただし、9年内はロの(イ)の話で、令和8年1月1日より前に支払を受けた退職手当等は4年内のままです(ロの(ロ))。一方、19年内のハには日付の限定がありません。 ここを一緒くたにすると、遡る年数を取り違えます。
退職金と確定拠出年金の一時金をどの順番で、何年空けて受け取るかが、控除額に直接効いてきます。計算の考え方は 早期退職の割増金にかかる税金 と 退職金の税金は?所得税法30条の退職所得控除を条文で計算する にまとめています。
定年前に手元で確かめる5つ
- 通算加入者等期間が何年あるか(10年に足りているか)
- 企業型とiDeCoの期間が通算されているか(転職・移換の履歴)
- 65歳以降も拠出を続けられる立場か(65歳以上の厚生年金被保険者で老齢年金の受給権があるかどうか)
- 一時金にするか年金にするか、受給開始をいつにするか(75歳が上限)
- 退職金を受け取る年との間隔(原則4年内。令和8年1月1日以後に支払を受けた分は9年内、本年中に確定拠出年金の一時金を受け取るなら19年内)
退職の日付そのものを動かせる場合は 退職日の逆算カレンダー も使えます。定年後の医療保険の並べ方は 定年後の健康保険は3択ではなく「区間」で考える にまとめました。
まとめ
- 60歳から受け取れるのは通算加入者等期間が10年以上ある人。足りないと61歳で8年、62歳で6年……と条文の表どおりに後ろへずれる
- 60歳以上75歳未満で加入した場合は、加入から5年を経過した日から請求できる
- 通算加入者等期間に入るのは、原則として60歳に達した日の前日が属する月以前の期間
- 請求しないまま75歳に達すると支給される。iDeCoは請求しないと供託される
- 掛金を出せるのは65歳になるまで。65歳以上の厚生年金被保険者でも、老齢年金の受給権がある方(加入期間120月以上)は第2号被保険者ではないため加入できない
- 老齢給付金を受け取ると、そこで拠出は終わる(62条2項1号)。公的年金の老齢給付の受給権を得た場合も同じ(同項2号・繰上げ受給を含む)
- 一時金は退職所得。確定拠出年金が絡むと重複判定が9年内・19年内に伸びる(9年内は令和8年1月1日以後に支払を受けた分。同日前は4年内のまま。19年内に日付の限定はない)
確かめるのは残高ではなく年数です。「何年入っていたか」が、受け取れる年齢と税金の両方を決めています。
出典(すべて 2026-09-06 に確認)
- e-Gov 法令検索「確定拠出年金法」第33条・第34条・第62条
- 国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト「iDeCoってなに?」「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」
- 国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」
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