定年後に失業給付と年金は同時に受け取れるか:65歳の前と後で仕組みが変わる
定年で辞めた後、失業給付と年金の両方を受け取れると考えている方がいます。65歳前は、原則として同時には受け取れません。 そして65歳を過ぎると、そもそも受け取るものの名前と形が変わります。
境目は誕生日ひとつです。順に条文で確認します。
この記事は2026-09-06 時点の公表資料の整理です。実際の支給額や手続きは、最寄りのハローワークおよび年金事務所にご確認ください。
65歳前:求職の申込みをした月の翌月から、年金が止まる
日本年金機構の年金と雇用保険の失業給付との調整(2026-09-06 確認)は、こう書いています。
特別支給の老齢厚生年金などの65歳になるまでの老齢年金(以下「年金」といいます。)と雇用保険の失業給付は同時には受けられません。
止まるタイミングも明示されています。
ハローワークで求職の申込みを行った日の属する月の翌月から失業給付の受給期間が経過した日の属する月(または所定給付日数を受け終わった日の属する月)まで、年金が全額支給停止されます。
基本手当を受け取ったからではなく、求職の申込みをしたことで止まります。 根拠は厚生年金保険法附則第7条の4(繰上げ支給の老齢厚生年金と基本手当等との調整)で、附則第11条の5がこれを特別支給の老齢厚生年金へ準用しています。
前条第三項の規定による老齢厚生年金は、その受給権者(雇用保険法(中略)第十四条第二項第一号に規定する受給資格を有する者であつて六十五歳未満であるものに限る。)が同法第十五条第二項の規定による求職の申込みをしたときは、当該求職の申込みがあつた月の翌月から次の各号のいずれかに該当するに至つた月までの各月において、その支給を停止する。
ただし、止めっぱなしにはなりません。同条2項は、その月に基本手当を受けたとみなされる日が1日も無い月については支給停止を適用しないと定め、3項は、止めた月数が実際の受給日数(30日で除して切り上げ)を上回った分を後から支給停止が無かったものとみなす、という精算の仕組みを置いています。
日本年金機構の同じページにも、基本手当を受けていない月の年金は3か月程度後に支給される、受給期間の経過後の支払い開始も3か月程度後になる、と書かれています。手元に入るまでの時間差を見込んでおく必要があります。
65歳以降:「基本手当」ではなく一時金になる
65歳以降に離職した場合、受け取るのは基本手当ではありません。雇用保険法第37条の2は、65歳以上の被保険者を高年齢被保険者と定義し、失業した場合には高年齢求職者給付金を支給するとしています。
金額は第37条の4が定めています。
一 一年以上 五十日 二 一年未満 三十日
基本手当の日額に、この日数を掛けた額です。ハローワークインターネットサービスの基本手当について(2026-09-06 確認)も、支給の形をこう説明しています。
失業認定は一般の受給資格者の場合とは異なり1回限りです。
4週間ごとに認定を受けて受け取り続ける形ではなく、一度で終わります。 受給要件は「算定対象期間(原則は離職前1年間)に被保険者期間が通算して6か月以上あること」で、一般の被保険者の12か月より短くなっています。
そして、この高年齢求職者給付金は、65歳前の調整規定の対象に入っていません。 支給を止める根拠である厚生年金保険法附則7条の4は、対象を「雇用保険法第14条第2項第1号に規定する受給資格を有する者であつて六十五歳未満であるもの」に限っており、止まる事由も「基本手当の支給を受け終わつたとき」という書き方です。高年齢求職者給付金は基本手当ではなく、受け取る側も65歳以上なので、この条文の外にあります。65歳を境に、仕組みそのものが入れ替わります。
日額の上限は60歳を過ぎると下がる
同じページに、基本手当日額の上限額が年齢区分ごとに載っています(令和8年8月1日現在)。
| 年齢区分 | 基本手当日額の上限 |
|---|---|
| 30歳未満 | 7,450円 |
| 30歳以上45歳未満 | 8,270円 |
| 45歳以上60歳未満 | 9,110円 |
| 60歳以上65歳未満 | 7,830円 |
45歳以上60歳未満の9,110円に対し、60歳以上65歳未満は7,830円です。年齢が上がると上限も上がる、という並びではありません。ここで金額の見込みを外す方が多い箇所です。
「しばらく休むつもり」なら、そもそも受けられない
見落としやすいのがここです。ハローワークの同じページは、基本手当を受けられない状態を列挙しており、その中に次の一行があります。
定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
失業給付は「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力がある」ことが前提です。定年で一区切りつけて休むつもりの人は、その間は対象になりません。
そのための逃げ道が、雇用保険法第20条2項に用意されています。
受給資格者であつて、当該受給資格に係る離職が定年(厚生労働省令で定める年齢以上の定年に限る。)に達したことその他厚生労働省令で定める理由によるものであるものが、当該離職後一定の期間第十五条第二項の規定による求職の申込みをしないことを希望する場合において、厚生労働省令で定めるところにより公共職業安定所長にその旨を申し出たときは、(後略)
定年で辞めた人は、求職の申込みをしない期間(1年を限度)を、受給期間に足せます。 原則1年の受給期間が、申し出により最大2年まで延びる形です。休んでから探すつもりなら、この申し出を先に済ませておくことになります。
継続雇用で働き続ける場合:基準額が令和8年4月に上がった
定年後に再雇用で働き、同時に年金を受け取る場合は、失業給付ではなく在職老齢年金の話になります。日本年金機構の在職老齢年金の計算方法(更新日2026年4月1日・2026-09-06 確認)は、直近の改正をこう説明しています。
令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づき、令和8年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられました。
計算式も同ページに示されています。
基本月額と総報酬月額相当額との合計が65万円以下の場合 全額支給 基本月額と総報酬月額相当額との合計が65万円を超える場合 基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2
51万円のつもりで再雇用後の給与を設計していると、前提が古くなっています。 なお、この基準額はこれまでも改定されてきた経緯があるため、再雇用の条件を詰める時点で、日本年金機構の同ページの最新の数字を確認してください。
順番の整理
- 65歳前に辞める → 求職の申込みをすると年金が止まる。基本手当と年金のどちらが多いかを比べてから申し込む
- 休んでから探す → 求職の申込みをせず、受給期間の延長を先に申し出る(雇用保険法20条2項)
- 65歳以降に辞める → 高年齢求職者給付金(30日分または50日分)の一時金。年金との調整は無い
- 再雇用で働き続ける → 在職老齢年金。基準額は令和8年4月から65万円
自己都合と会社都合で日数がどう変わるかは 自己都合と会社都合で失業給付はどれだけ変わるか に、辞めた後に届く納付書は 退職後に届く納付書は3つ にまとめています。
まとめ
- 65歳前は、求職の申込みをした月の翌月から年金が全額支給停止(厚年法附則7条の4・11条の5)
- 停止しすぎた分は後から精算される。ただし手元に入るのは3か月程度後
- 65歳以降は高年齢求職者給付金に変わる。1年以上で50日分、1年未満で30日分の一時金で、認定は1回限り。厚年法附則7条の4の調整は「基本手当」「65歳未満」が対象なので、この給付金は対象外
- 基本手当日額の上限は60歳以上65歳未満で7,830円。45歳以上60歳未満の9,110円より低い
- 「しばらく休養しようと思っているとき」は対象外。定年退職者は受給期間の延長(最大1年)を申し出られる
- 再雇用で働くなら在職老齢年金。基準額は令和8年4月から月65万円
決める順番は、金額の比較よりも先に「いつ求職の申込みをするか」です。そこが年金の止まる日を決めています。
出典(すべて 2026-09-06 に確認)
- e-Gov 法令検索「厚生年金保険法」附則第7条の4・附則第11条の5
- e-Gov 法令検索「雇用保険法」第20条第2項・第37条の2・第37条の3・第37条の4
- 日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」「在職老齢年金の計算方法」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」(基本手当日額の上限額は令和8年8月1日現在)
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