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自己都合と会社都合で失業給付はどれだけ変わるか : 給付制限と所定給付日数を条文で比べる

「自己都合で辞めると損をする」とはよく言われます。ただ、何がどれだけ違うのかまで説明されることは多くありません。

雇用保険法の条文にあたると、違いが出る箇所は2つあります。 ひとつは支給が始まるまでの期間、もうひとつは支給される日数です。

この記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。離職理由の判定は、離職票の記載や事実関係をもとにハローワークが行います。 受給の可否・金額・時期はご自身の加入期間や離職理由によって異なります。具体的な手続きはお住まいを管轄するハローワークにご確認ください。

違いが出る1つ目:給付制限の期間

自己都合の場合に関わるのが雇用保険法33条1項です。

被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合には、第二十一条の規定による期間の満了後一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない。ただし、次に掲げる受給資格者(略)については、この限りでない。

条文が定めているのは「一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない」という枠です。期間そのものが法律で1つに固定されているわけではありません。幅のなかで公共職業安定所長が定める、という書き方になっています。

また、条文の主語は「正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」です。自己都合であれば一律にこの条文がかかる、とは書かれていません。 但書で除外される受給資格者も置かれています。

なお、この条文は「第二十一条の規定による期間の満了後」と書いています。21条の内容はこの記事では引用していません。支給開始までの全体の流れは、ハローワークが案内しています。ページは基本手当についてです。

違いが出る2つ目:所定給付日数

一般の受給資格者の日数を定めているのが22条1項です。

一の受給資格に基づき基本手当を支給する日数(以下「所定給付日数」という。)は、次の各号に掲げる受給資格者の区分に応じ、当該各号に定める日数とする。  一 算定基礎期間が二十年以上である受給資格者 百五十日  二 算定基礎期間が十年以上二十年未満である受給資格者 百二十日  三 算定基礎期間が十年未満である受給資格者 九十日

区分は3つだけで、年齢は出てきません

算定基礎期間 所定給付日数(22条1項)
20年以上 150日
10年以上20年未満 120日
10年未満 90日

これに対し、特定受給資格者の日数を定める23条1項は、年齢と算定基礎期間の組み合わせで細かく分かれます。

基準日の年齢 20年以上 10年以上20年未満 5年以上10年未満 1年以上5年未満
60歳以上65歳未満 240日 210日 180日 150日
45歳以上60歳未満 330日 270日 240日 180日
35歳以上45歳未満 270日 240日 180日 150日
30歳以上35歳未満 240日 210日 180日 120日
30歳未満 180日(10年以上) 120日

(30歳未満については、条文が「十年以上 百八十日」「五年以上十年未満 百二十日」の区分を掲げています。上の表は、その2つを該当する列に置き直したにすぎません。)

同じ勤続年数でも、何日変わるのか

2つの表を引き算すると、差がそのまま出ます。

年齢・算定基礎期間 一般(22条1項) 特定受給資格者(23条1項)
30歳以上35歳未満・10年以上20年未満 120日 210日 +90日
30歳以上35歳未満・20年以上 150日 240日 +90日
30歳以上35歳未満・5年以上10年未満 90日 180日 +90日
45歳以上60歳未満・20年以上 150日 330日 +180日
30歳未満・5年以上10年未満 90日 120日 +30日

同じ勤続年数・同じ会社を辞めても、区分が変わるだけで90日から180日の差が出るケースがあります。これは条文の数字からそのまま読み取れます。給付制限の期間と合わせると、生活費の見通しはかなり変わります。

「誰が特定受給資格者にあたるか」は条文だけでは決まらない

ここを条文だけで判断することはできません。特定受給資格者の定義を置いている23条2項1号・2号を引きます。

一 当該基本手当の受給資格に係る離職が、その者を雇用していた事業主の事業について発生した倒産(略)又は当該事業主の適用事業の縮小若しくは廃止に伴うものである者として厚生労働省令で定めるもの 二 前号に定めるもののほか、解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く。略)その他の厚生労働省令で定める理由により離職した者

どちらの号も、末尾が「厚生労働省令で定めるもの」「厚生労働省令で定める理由」で締められています。つまり、具体的に誰が該当するのかは法律の条文だけでは決まりません。

そして、実際の判定は条文ではなく手続きのなかで行われます。離職票に記載された離職理由と、本人・会社双方から確認した事実関係をもとに、ハローワークが判断します。 会社が離職票にどう書いたかで自動的に確定するわけでもありません。

所定給付日数の一覧は、ハローワークが公表しています。ページは基本手当の所定給付日数です。受給の条件そのものは 失業給付の受給条件 にまとめています。金額の考え方は 退職後の生活費はどれくらい要る? にあります。

手続きの前に押さえておくこと

離職票が手元に届かないと手続きが始まりません。届かない場合の動き方は 離職票が届かない時の対処 にまとめています。加入手続きの一般的な流れは、ハローワークが案内しています。ページは雇用保険の加入手続き等です。

離職理由の欄に自分の認識と違うことが書かれていた場合も、その場で確定するわけではありません。ハローワークの窓口で、自分の認識を伝えてください。それを裏づける記録(勤務時間の記録・やりとりの履歴など)を示して申し出る形になります。

条文の数字で見た差

  • 雇用保険法33条1項は、正当な理由なく自己都合で退職した場合、1か月以上3か月以内で公共職業安定所長が定める期間は基本手当を支給しないと定めている
  • 一般の受給資格者の所定給付日数(22条1項)は、算定基礎期間だけで150日/120日/90日の3区分
  • 特定受給資格者の日数(23条1項)は年齢と算定基礎期間の組み合わせで、最大330日(45歳以上60歳未満・20年以上)
  • 同じ勤続年数でも区分が変われば90日から180日の差が出るケースがある
  • 誰が特定受給資格者にあたるかは23条2項が厚生労働省令に委ねており、実際の判定はハローワークが行う

条文で差の大きさを知っておくと、離職票の記載を確認する意味がはっきりします。

退職後の給付金(失業給付)について

離職理由の区分で給付が変わるとしても、注意が必要です。失業給付(雇用保険の基本手当)の申請は、退職後にご本人がハローワークで行う手続きで、退職代行が代理申請することはできません。 受給の可否・金額・時期は、加入期間や離職理由などご自身の事情によって異なります。

当サイトは制度の概要や考え方を情報として紹介するにとどめ、申請の代行や受給の保証は行いません。 具体的な対象可否や手続きは、ハローワークなどの公的機関や、社会保険労務士をはじめとする専門家にご確認ください。「必ずもらえる」「受給を保証する」といった断定的な案内には十分ご注意ください。

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