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希望退職に応じるかを決める前に:割増退職金と、離職理由がどちらに倒れるか

会社が希望退職を募集したとき、判断材料は「割増退職金がいくらか」だけではありません。同じ額を提示されても、離職理由がどちらに倒れるかで、その後に受け取れる失業給付の日数が大きく変わります。

しかも、その分かれ目を決めるのは募集の中身ではありません。その制度が今回限りのものか、前から就業規則にあるものか。分かれ目はそこにしかありません。

この記事は2026-09-06 時点の公表資料の整理です。個別の判定はハローワークが行います。実際の扱いは最寄りのハローワークにご確認ください。

分かれ目は「前からある制度かどうか」

根拠は 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要 です。ハローワークインターネットサービスの資料を2026-09-06 に確認しました。ここにそのまま書かれています。特定受給資格者の「2 『解雇』等により離職した者」の(11)です。

(11) 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)

括弧の中が本題です。 前から就業規則に置かれている早期退職優遇制度に自分から応募した場合、この(11)には当たりません。

では当たらないと何も無いのかというと、そうではありません。同じページの特定理由離職者「2 以下の正当な理由のある自己都合により離職した者」の(6)が受け皿になっています。

(6) その他、上記「特定受給資格者の範囲」の2.の(11)に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等

人員整理として募集された希望退職に応じた場合は、特定理由離職者という区分に入ります。特定受給資格者とは別の区分です。

日数の差は最大で180日

区分が変わると何が変わるのか。雇用保険法(2026-09-06 確認)は、所定給付日数を2つの条文に分けて書いています。

第22条1項(一般の受給資格者)は、年齢に関係なく次の3段だけです。

一 算定基礎期間が二十年以上である受給資格者 百五十日 二 算定基礎期間が十年以上二十年未満である受給資格者 百二十日 三 算定基礎期間が十年未満である受給資格者 九十日

一方、第23条1項(特定受給資格者)は年齢で刻まれます。該当箇所だけを抜き出すと、次のとおりです(各号・各細目の一部を省略しています)。

二 基準日において四十五歳以上六十歳未満である特定受給資格者  イ 二十年以上 三百三十日  (ロ〜ニ 略)

勤続20年以上・50歳のケースで、150日と330日。差は180日です。60歳以上65歳未満なら20年以上で240日(同条1項1号イ)。ハローワークの表でも同じ数字が確認できます。基本手当の所定給付日数 のページです。

なお、特定理由離職者のうち期間の定めのある労働契約の更新が無かった方がいます(同ページの「1」に該当する方)。この方は、離職日が2027年3月31日までの間にある場合に限って、所定給付日数が特定受給資格者と同じ扱いになります。希望退職に応じた場合(「2」の(6))は、この読み替えの対象ではありません。 「特定理由離職者だから日数も同じ」とは限らない、ということです。

区分ごとの詳しい比較は 自己都合と会社都合で失業給付はどれだけ変わるか にまとめました。

離職票の欄も、最初から分けて作られている

この区別は書類の様式にも現れています。様式は 雇用保険被保険者離職票-2の記入例 にあります。様式第6号(2)(第7条関係)を2026-09-06 に確認しました。⑦離職理由欄には、別々の行が用意されています。

  • 3(3)早期退職優遇制度、選択定年制度等により離職(「3 労働契約期間満了等によるもの」の中)
  • 4(3)希望退職の募集又は退職勧奨(「4 事業主からの働きかけによるもの」の中)。さらに「① 事業の縮小又は一部休廃止に伴う人員整理を行うためのもの」「② その他」に分かれる

「事業主からの働きかけ」に入るか、「労働契約期間満了等」に入るか。 会社がどちらの欄に丸を付けたか。それがそのまま判定の入口になります。⑦離職理由欄の冒頭にも注記があります。

【離職理由は所定給付日数・給付制限の有無に影響を与える場合があり、適正に記載してください。】

募集の案内文を保管しておくことが、ここで効いてきます。今回限りの人員整理として募集されたのか、以前から制度としてあったものか。その差は案内文の書き方に出ます。応じないでいると解雇に進むのではないか。それが気になる場合は、人員整理としての解雇がどう判断されてきたかを 整理解雇の「4要件」はどこに書いてあるか で確認してください。募集の位置づけが読みやすくなります。離職票の見方は 会社都合を離職票でどう確かめるか にまとめました。

割増退職金は「退職所得」に入る

金額の側も確認しておきます。根拠はNo.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)です。国税庁のタックスアンサーで、令和7年4月1日現在法令等・2026-09-06 に確認しました。退職所得の範囲をこう書いています。

退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、確定拠出年金法に規定する企業型年金規約または個人型年金規約に基づいて老齢給付金として支給される一時金なども退職所得とみなされます。

希望退職の割増分も例外ではありません。退職に基因して一時に支払われる以上、退職所得として扱われます。 名目で判断しないことも、国税庁が明記しています。根拠はNo.2732 退職手当等に対する源泉徴収です。令和7年4月1日現在法令等・2026-09-06 に確認しました。

この退職手当等には、退職したことに基因して支払われるすべての給与が含まれますので、本来の退職手当のほかに功労金などを支給しても退職手当等に含めなければなりません。

給与や賞与のように総合課税されるわけではありません。

退職所得控除額は、勤続20年以下が1年あたり40万円です(80万円に満たない場合は80万円)。20年超は800万円+70万円×(年数−20)になります。勤続30年なら1,500万円が控除され、残りの2分の1が退職所得の金額になります(一般退職手当等の場合)。表と条文の逐語引用、計算の詳細は 退職金の税金は?所得税法30条の退職所得控除を条文で計算する にまとめました。割増分の扱いで注意する点は 早期退職の割増退職金にかかる税金 にまとめています。

応じる前に確かめる4つ

  1. 募集の根拠(今回限りの人員整理か、前からある早期退職優遇制度か):案内文を保管する
  2. 離職票の⑦欄で会社がどこに丸を付ける予定か(3(3)か、4(3)①か)
  3. 自分の年齢と算定基礎期間での所定給付日数(22条か23条か)
  4. 割増を含めた退職金の総額と、勤続年数から出る退職所得控除額

割増額だけを見て「多いから応じる」と決めると、日数の差(最大180日)が計算から抜けます。 逆に、日数だけを見て断ると、割増を取り逃がします。両方を同じ紙の上に並べてから決めるところです。

日付の逆算が必要なときは 退職日の逆算カレンダー が使えます。

決め手は、その募集が今回限りかどうか

  • 恒常的な早期退職優遇制度に応募した場合は、特定受給資格者に該当しない(ハローワークの明文のただし書き)
  • 人員整理としての希望退職募集に応じた場合は特定理由離職者(範囲の2の(6))
  • 所定給付日数は一般が150日/120日/90日、特定受給資格者は年齢別で最大330日
  • 特定理由離職者の日数の読み替え(2027年3月31日まで)は、契約更新が無かった方が対象で、希望退職の応募は含まれない
  • 離職票-2は「3(3)早期退職優遇制度」と「4(3)希望退職の募集又は退職勧奨」を別の欄に分けている
  • 割増退職金も退職所得。勤続30年なら控除は1,500万円

決め手は金額ではなく、その募集が今回限りのものかどうかです。案内文の1枚が、後の日数を決めます。

出典(すべて 2026-09-06 に確認)

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