退職時に受け取る書類の一覧|期限が定められているものは
「辞めたあと、何を受け取ればいいのか」。出社せずに退職した場合、誰も教えてくれないまま数週間が過ぎ、必要になった時に初めて足りないことに気づく、というのがよくある流れです。しかも書類ごとに使い道が違うので、一つ抜けるだけで別の手続きが止まります。
この記事では、受け取るものを一覧にして、条文で期限が定められているものを明示します。 期限のある書類は、催促するときの根拠がはっきりしているぶん動きやすくなります。
この記事は一般的な情報の整理であり、法的助言・税務助言ではありません。個別の手続きや税務の取り扱いは、ハローワーク・市区町村・所轄の税務署など、それぞれの窓口にご確認ください。
受け取る書類の一覧
| 書類 | 何に使うか | 定めのある期限 |
|---|---|---|
| 離職票(雇用保険被保険者離職票) | 失業給付の手続き | 会社の届出は退職日の翌日から10日以内 |
| 源泉徴収票 | 転職先の年末調整・確定申告 | 退職の日以後1か月以内 |
| 雇用保険被保険者証 | 転職先での雇用保険の手続き | 会社が保管している場合は返却 |
| 年金手帳/基礎年金番号通知書 | 年金の切り替え・転職先での手続き | 会社が保管している場合は返却 |
| 退職証明書 | 国民健康保険の手続き・転職先の求め | 請求があれば遅滞なく |
| 健康保険資格喪失証明書 | 国民健康保険への加入手続き | 保険者・会社の運用による |
| 未払い賃金・積立金など | ― | 請求があれば7日以内 |
期限が条文で定められているものから順に、根拠を確認していきます。
離職票:会社の届出は「10日以内」
離職票は本人がもらう書類ですが、会社がハローワークへ届け出て、交付されたものが本人に渡るという順路です。会社側の期限は雇用保険法施行規則7条1項に定められています。
事業主は、法第七条の規定により、その雇用する労働者が当該事業主の行う適用事業に係る被保険者でなくなつたことについて、当該事実のあつた日の翌日から起算して十日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届(略)を(略)提出しなければならない。
同条3項には、本人が離職票の交付を希望しない場合は離職証明書を添えなくてよい旨も定められています。ただし同項には「ただし、離職の日において五十九歳以上である被保険者については、この限りでない。」という但書があり、59歳以上の場合はこの例外の対象外です。いずれにせよ、退職時に「離職票は必要です」と明確に伝えておくことが効きます。詳しくは 離職票が届かない時 を。
源泉徴収票:「退職の日以後1か月以内」
所得税法226条1項は、給与等の源泉徴収票について次のように定めています。
(略)その年の翌年一月三十一日まで(年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後一月以内)に、一通を税務署長に提出し、他の一通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない。
退職金がある場合は、同条2項が同じく「その退職の日以後一月以内」と定めています。届かない場合の進め方は 源泉徴収票が届かない時 にまとめました。
退職証明書:請求すれば「遅滞なく」
意外と知られていないのが、退職証明書を請求できることです。労働基準法22条1項を条文のまま引きます。
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
「請求した場合においては」が条件で、請求しなければ発行されません。そして同条3項には、次の定めもあります。
前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
請求していない事項を書いてはいけない。つまり、退職理由を書いてほしくない場合は、その項目を請求しなければよい、という設計です。離職票が届くまでの間に国民健康保険の手続きを進めたい場合など、退職の事実を示す書類として使える場面があります。
未払いの賃金・金品:請求すれば「7日以内」
同法23条1項です。
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
こちらも「請求があつた場合においては」が起点です。同条2項では、争いがある場合でも異議のない部分は同じ期間内に支払う・返還する旨が定められています。
返す側も一緒に整理する
受け取るものだけを追いかけると、返却物が残って連絡が続きます。同じ一覧で管理するのが結局いちばん早い方法です。
| 返すもの | 補足 |
|---|---|
| 社員証・入館カード・鍵 | 紛失している場合は先に申告 |
| 制服・作業着 | クリーニングの要否を確認 |
| PC・スマートフォン・周辺機器 | 私物データの扱いを先に確認 |
| 名刺(自分の分・受け取った分) | 会社の運用による |
| 健康保険証 | 退職日の翌日以降は使用できない |
| 業務資料・USBメモリ等 | 持ち出しは避ける |
健康保険証については、資格を失うのが退職日の翌日である点(健康保険法36条)を押さえておいてください。詳しくは 月末退職と月初退職はどちらが得か、切り替えの手順は 退職後の健康保険と年金 をご覧ください。
届かない時の順番と、任せられる範囲
- 退職日から日数を数える。 上の表の期限を過ぎているか確認します。
- 送付先住所が正しく伝わっているか確認する。
- 記録の残る形でまとめて請求する。 書類ごとにバラバラに連絡せず、一度の書面で全部求めます。書面の体裁は 退職届を郵送で出す時の送り方と添え状 が流用できます。
- それでも動かない場合、窓口に相談する。 離職票はハローワーク、源泉徴収票は所轄の税務署、住民税は市区町村です。
自分で連絡したくない場合、対応できる範囲は運営元で変わります。民間企業タイプは伝達のみ、労働組合は団体交渉、弁護士は代理人として請求という区分です(運営元タイプの違い/団体交渉権で何ができるのか)。依頼する時点で「退職後の書類受け取りまで含まれるか」を確認しておくのが、あとで一人にならないコツです。
住民税の切り替えは 住民税は退職後どう払う? に、退職後の転職の段取りは 退職後の転職の段取り にまとめています。
まとめ
- 期限が条文で定められている書類は、離職票(会社の届出:退職日の翌日から10日以内)・源泉徴収票(退職の日以後1か月以内)・退職証明書(請求があれば遅滞なく)・賃金や金品の返還(請求があれば7日以内)
- 退職証明書と金品の返還は「請求があった場合」が起点。請求しなければ動かない
- 退職証明書には、請求しない事項を記入してはならない(労基法22条3項)
- 受け取るものと返すものを同じ一覧で管理すると、連絡の往復が減る
- 届かない時は、日数を数えて記録の残る形で一度にまとめて請求する
「何が届くはずか」を先に一覧にしておくと、抜けに気づくのが早くなります。退職を伝える前に、この表を控えておいてください。
退職後の給付金(失業給付)について
書類がそろえば給付が始まる、と考える人もいるかもしれませんが、注意が必要です。失業給付(雇用保険の基本手当)の申請は、退職後にご本人がハローワークで行う手続きで、退職代行や第三者が代理申請することはできません。 受給の可否・金額・時期は、加入期間や離職理由などご自身の状況によって異なります。
当サイトは制度の概要や考え方を情報として紹介するにとどめ、申請の代行や受給の保証は行いません。 具体的な対象可否や手続きは、ハローワークなどの公的機関や、社会保険労務士をはじめとする専門家にご確認ください。「必ずもらえる」「受給を保証する」といった断定的な案内には十分ご注意ください。
あわせて読みたい
退職から転職までの進み方
お金の見通しが立ったら、次は転職活動の段取りを組む段階です。 転職の準備の記事を見る →


