源泉徴収票が届かない時は?「退職の日以後1か月以内」の定め
「転職先に源泉徴収票を出してくださいと言われたのに、前の会社から届かない」。「年末調整に間に合わない」。退職後の書類の中で、離職票と並んで滞りやすいのが源泉徴収票です。
この記事は、いつまでに交付されるものなのかを条文で確認しました。そのうえで、届かない時に何をするかを順番に並べています。条文に期限が書かれている書類です。ですから、催促の根拠がはっきりしています。
この記事は一般的な情報の整理であり、法的助言・税務助言ではありません。個別の税務の取り扱いは、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
期限は「退職の日以後1か月以内」
源泉徴収票の交付を定めているのは226条1項です。条文は所得税法にあります。該当部分をそのまま引きます。
居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(略)の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その年において支払の確定した給与等について、その給与等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票二通を作成し、その年の翌年一月三十一日まで(年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後一月以内)に、一通を税務署長に提出し、他の一通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない。ただし、財務省令で定めるところにより当該税務署長の承認を受けた場合は、この限りでない。
大事なのは括弧の中です。年の中途で退職した人については「その退職の日以後一月以内」と定められています。在職中の人は「翌年1月31日まで」です。年の中途で退職した人に、この日付は当てはまりません。
退職金がある場合は、同条2項が別に期限を定めています。
居住者に対し国内において第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等(略)の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その年において支払の確定した退職手当等について、その退職手当等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票二通を作成し、その退職の日以後一月以内に、一通を税務署長に提出し、他の一通を退職手当等の支払を受ける者に交付しなければならない。
給与の分も、退職金の分も、基準は「退職の日以後1か月以内」です。
なお同条4項では、電磁的方法(電子データ)での提供も認められています。本人の承諾がなければ、この方法は使えません。ただし但書があります。本人から請求があれば書面で交付しなければならない、という定めです。「電子で見られますよ」と言われても、紙が必要なら請求できます。
何に使う書類か
催促する前に、自分がいつまでに必要なのかをはっきりさせてください。ここが決まらないと、優先順位もつきません。
| 使い道 | いつまでに要るか |
|---|---|
| 転職先での年末調整 | その年の年末調整の締切まで(会社ごとに異なる) |
| 自分で確定申告する | 申告の時期まで |
| 収入証明(賃貸契約・ローン審査など) | その手続きの都合 |
| 国民健康保険料・住民税の確認 | 随時 |
年内に転職して、転職先の年末調整に含めてもらうとします。このとき、いちばん切実なのは締切です。前職の源泉徴収票が締切に間に合うかどうかが実務のヤマになります。間に合わなければ、年末調整には入りません。自分で確定申告する形になります。詳しくは所轄の税務署にご確認ください。
住民税の扱いは、源泉徴収票とは別の話です。住民税は退職後どう払う? をご覧ください。
届かない時の順番
- 退職日から1か月を数える。 226条1項の期限を過ぎているかどうか。ここで催促の位置づけが変わります。
- 送付先住所が正しく伝わっているか確認する。 引っ越しをしているとどうなるか。ここで止まっていることがよくあります。
- 記録の残る形で会社に請求する。 「所得税法226条にもとづき、源泉徴収票の交付をお願いします」と書面かメールで伝えます。書面を郵送する場合の体裁は 退職届を郵送で出す時の送り方と添え状 にあります。その考え方が流用できます。
- それでも届かない場合、所轄の税務署に相談する。 交付は法律上の義務として定められています。ですから、税務署に事情を相談する道があります。
- 確定申告の準備も並行して進める。 給与明細は保管しておいてください。状況の説明がしやすくなります。
一緒に催促できるものをまとめておく
書類をバラバラに催促しても、手間は減りません。一度の連絡でまとめて求めるほうが実際的です。
| 書類 | 定めのある期限 |
|---|---|
| 源泉徴収票 | 退職の日以後1か月以内(所得税法226条1項・2項) |
| 離職票 | 会社の届出は退職日の翌日から10日以内(雇用保険法施行規則7条1項) |
| 退職証明書 | 請求があれば遅滞なく交付(労働基準法22条1項) |
| 賃金・金品の返還 | 権利者の請求があれば7日以内(同法23条1項) |
| 雇用保険被保険者証 | 会社が保管している場合は返却 |
労働基準法23条1項は、条文のまま次のように定めています。
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。
「権利者の請求があつた場合においては」という条件つきです。ここに注意してください。請求しなければ、7日の起点が立ちません。書類の全体像は 退職時に受け取る書類の一覧 にあります。離職票が届かない場合は 離職票が届かない時 にまとめました。
自分で連絡したくない場合
前の会社に自分から連絡すること自体がつらい、という場合もあります。どこまで任せられるかは、運営元によって変わります。
| 運営元タイプ | 書類の催促について |
|---|---|
| 民間企業 | 「送付してほしい」と伝えることはできる |
| 労働組合 | 団体交渉の枠内で話し合える |
| 弁護士 | 代理人として請求し、争いになれば法的対応まで |
労働組合の交渉権限は労働組合法6条にもとづきます。中身は 団体交渉権で何ができるのか にまとめました。依頼する時点で「退職後の書類の受け取りまで含まれるか」を確認してください。 そうすれば、あとから一人で催促する事態になりません。対応範囲は各サービスの公式サイトでご確認ください。タイプの違いは 運営元タイプの違い にあります。料金は 料金相場と選び方 をご覧ください。
期限と催促の順番
- 源泉徴収票は、所得税法226条1項により、年の中途で退職した人には「退職の日以後一月以内」に交付することとされている
- 退職金の分も同条2項で「退職の日以後一月以内」
- 電子提供が可能な場合でも、本人の請求があれば書面で交付しなければならない(同条4項但書)
- 届かない時は、①日数を数える ②送付先住所を確認 ③記録の残る形で請求 ④所轄の税務署に相談、の順
- 離職票・退職証明書・金品の返還とまとめて一度に求めるほうが効率がよい
条文に期限が書かれている書類です。催促するときは、根拠を添えられます。遠慮より、記録の残る一通が効きます。
退職後の給付金(失業給付)について
書類がそろえば給付も自動的に始まる、と考える人もいるかもしれません。ここは注意が必要です。失業給付(雇用保険の基本手当)の申請は、退職後にご本人がハローワークで行う手続きで、退職代行が代理申請することはできません。 受給の可否・金額・時期は、加入期間や離職理由などご自身の事情によって異なります。
当サイトは制度の概要や考え方を情報として紹介するにとどめ、申請の代行や受給の保証は行いません。 具体的な対象可否や手続きは、ハローワークなどの公的機関や、社会保険労務士をはじめとする専門家にご確認ください。「必ずもらえる」「受給を保証する」といった断定的な案内には十分ご注意ください。
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