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労働組合の団体交渉権で何ができる?条文から範囲を整理

「労働組合が運営しているタイプなら交渉できる、と書いてあるけれど、その"交渉"はどこまでを指すのか」。退職代行を比べていると、この一言でつまずく人は多いはずです。団体交渉権という言葉は出てくるのに、それで具体的に何ができるのかは、たいてい書かれていません。

この記事は、労働組合法の条文そのものにあたって、団体交渉権が何を根拠にしていて、どこまでを射程に入れているのかを確かめたものです。範囲がはっきりすれば、「自分のケースは労働組合タイプで足りるのか、弁護士まで必要なのか」を自分で判断できます。

この記事は一般的な情報の整理であり、特定のサービスを推奨・批判するものではありません。また法的助言ではありません。個別の可否はご自身の事情により異なるため、実際の対応範囲は各サービスの公式サイトで、法的な判断は弁護士などの専門家にご確認ください。

根拠になっている条文は労働組合法6条

団体交渉権の中身を決めているのは、労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)です。まず6条を、条文のまま引きます。

第六条(交渉権限) 労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。

読み取れることは3点です。

  1. 交渉できるのは「労働組合の代表者」または「労働組合の委任を受けた者」である。つまり、交渉に立つ人は組合という組織の側の人でなければなりません。
  2. 交渉は「労働組合又は組合員のために」行われる。ここが重要で、あなたが組合員であることが前提になります。労働組合運営の退職代行で「組合への加入」を求められるのは、この条文の形に合わせるためです。
  3. 交渉の対象は「労働協約の締結その他の事項」と広く書かれている。退職日の調整や有給消化、未払い分の扱いは、この「その他の事項」に収まります。

つまり団体交渉権は、組合が組合員のために、使用者と労働条件について話し合う権限です。これは弁護士の代理権と同じものではありません。出どころがまったく違う、別ルートの権限です。

会社は「話さない」と言えるのか(7条2号)

もうひとつ効いてくるのが7条です。会社側の対応を縛る条文で、こちらも該当部分をそのまま引きます。

第七条(不当労働行為) 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。 二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

正当な理由なく団体交渉を拒むことは、不当労働行為として禁じられています。 「うちは代行業者とは話さない」と会社が言い出す場面を心配する人は多くいます。相手が労働組合なら、この条文が背景にあります。ここが民間企業タイプとの決定的な違いです。

ただし、これは「会社が必ず要求どおりに応じる」という意味ではありません。拒否できないのは"交渉のテーブルにつくこと"です"こちらの主張を全部のむこと"ではありません。ここは分けて理解しておく必要があります。

団体交渉権でできること・できないこと

条文の射程を、退職の場面に落とし込むと次のようになります。

やりたいこと 労働組合(団体交渉権) 民間企業(伝達のみ) 弁護士(代理権)
退職の意思を会社に伝える できる できる できる
退職日を会社と調整する できる できない できる
有給消化について話し合う できる できない できる
未払い賃金・残業代の支払いを求めて交渉する できる できない できる
私物の返送・貸与品の返却方法を取り決める できる できない できる
訴訟・労働審判の代理人になる できない できない できる
損害賠償請求への法的対応(応訴) できない できない できる

境目はひとつです。団体交渉権は「話し合いのテーブル」までの権限です。裁判所を使う場面の権限ではありません。 訴訟や労働審判で本人の代わりに立つことは、弁護士法72条により弁護士(および弁護士法人)に限られています。

3タイプの権限の違い全体は 運営元タイプの違い で、非弁行為の線引きは 退職代行は違法じゃない? で詳しく整理しています。

「交渉が要るか」を先に決めると選びやすい

団体交渉権の範囲がわかると、選び方の順番が変わります。業者を先に見る必要はありません。自分のケースで何が起きそうかを先に決めるほうが早く進みます。

  1. 争点があるか棚卸しする。 退職日、有給の残日数、未払いの残業代、貸与品、私物と、会社と決めなければならないことを書き出します。ひとつもなければ、伝達で足りる可能性があります。
  2. 争点が「話し合いで決まること」なら労働組合の射程。 退職日や有給の割り当ては、まさに労働条件の話し合いです。
  3. 争点が「請求・訴訟になりうること」なら弁護士の射程。 損害賠償を持ち出されている、未払い額が大きく回収まで見据えたい、といった場合です。

退職日そのものについては、民法627条の2週間と就業規則の予告日数が何月何日になるかを 退職日の逆算カレンダー で並べて確認できます。交渉に入る前に、自分の側の日付を持っておくと、話し合いの軸がぶれません。

「労働組合と提携」の表示は中身を見る

もうひとつ実務的な注意点があります。表示のしかたが、実体と一致しているかどうかです。

6条が求めているのは「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者」が交渉に立つ形です。確認したいのは次の点です。

  • 組合名が明示されているか。 どの労働組合なのかが名前でわかること。
  • 依頼者が組合員になる仕組みか。 6条は「組合員のために」交渉すると書いています。加入の手続きが案内されているかを見ます。
  • 交渉に立つのが誰かが説明されているか。 民間の担当者が組合の名前だけ借りて交渉している形になっていないか。

料金だけを見て選ぶと、この確認が抜けます。相場の考え方は 料金相場と選び方 に、各タイプの横並びは サービス比較一覧 にまとめています。

権限の線引きをどう使うか

  • 団体交渉権の根拠は労働組合法6条。組合の代表者または委任を受けた者が、組合員のために使用者と交渉できる権限
  • 同法7条2号により、使用者は正当な理由なく団体交渉を拒めない。ただし「応じる義務」は"テーブルにつくこと"であって、要求をのむことではない
  • 射程は話し合いまで。訴訟・労働審判の代理は弁護士法72条により弁護士の領域
  • 選ぶ前に「自分のケースで会社と決めることは何か」を棚卸しすると、必要な権限が自然に決まる

話し合いで片づく争点なら労働組合タイプ、裁判所が視野に入るなら弁護士タイプ。この一線で見ると、迷いはかなり減ります。

退職後の給付金(失業給付)について

退職後の生活費として「失業給付があるから」と考える人もいるかもしれません。ここは注意が必要です。失業給付(雇用保険の基本手当)の申請は、退職後にご本人がハローワークで行う手続きで、退職代行や労働組合が代理申請することはできません。 受給の可否・金額・時期は、加入期間や離職理由などご自身の事情によって異なります。

当サイトは制度の概要や考え方を情報として紹介するにとどめ、申請の代行や受給の保証は行いません。 具体的な対象可否や手続きは、ハローワークなどの公的機関や、社会保険労務士をはじめとする専門家にご確認ください。「必ずもらえる」「受給を保証する」といった断定的な案内には十分ご注意ください。

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