退職届・退職願・辞表の違い|撤回できるかで分かれる
「退職届と退職願、どっちを出せばいいのか」。似た言葉が3つあって、しかもどこにも法律上の定義が書かれていないので、調べるほど混乱します。実務上の使い分けなので、根拠を探しても見つからないのは当然なのです。
この記事では、3つの言葉が実務でどう使い分けられているかを整理したうえで、それが法律上の意思表示の仕組みとどうつながるかを条文で確認します。違いの核心は、撤回できるかどうかです。
この記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。書類の名称や様式について法律上の定義があるわけではなく、会社ごとの運用もあります。個別の判断は弁護士や社会保険労務士など専門家にご確認ください。
3つの言葉の実務上の使い分け
| 名称 | 意味あい | 撤回の余地 | 主に使う場面 |
|---|---|---|---|
| 退職願 | 「退職させてください」とお願いする書面 | 会社が承諾するまでは残るとされる | 円満に進めたい・相談から始めたい |
| 退職届 | 「退職します」と通告する書面 | 出したあとの撤回は難しいとされる | 意思が固まっている・会社が渋っている |
| 辞表 | 役員・公務員が職を辞する際の書面 | ― | 一般の従業員は通常使わない |
辞表は、一般の会社員が使う書類ではありません。 取締役など委任関係にある役員や、公務員が使う言葉です。一般の従業員が辞表と書いても書類として無効になるわけではありませんが、場違いな印象を与えることがあります。公務員の退職手続きは 公務員は退職代行を使える? をご覧ください。
法律上の裏づけはどこにあるか
「退職届」「退職願」という言葉そのものは、法律に出てきません。関係するのは、意思表示についての条文です。
民法627条1項は、期間の定めのない雇用について次のように定めています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
そして同法97条1項です。
意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
「解約の申入れ」という一方的な意思表示が、到達によって効力を生じる。これが「退職届」の型に対応します。一方、「退職願」は会社の承諾を求める申込みという色合いが強く、承諾が成立するまでの間は状況が動きうる、と説明されます。撤回できるかどうかの差は、この違いから来ています。出したあとに気持ちが変わった場合にどこまで戻せるかは 一度出した退職届は撤回できるか で条文にあたって整理しています。
なお、どちらの型として扱われるかは書類の題名だけで決まるとは限りません。 文面の内容や、そこまでのやり取りの経緯もあわせて見られます。「退職願と書けば必ず撤回できる」と決めつけないでください。
どちらを出すべきか
判断の目安を、状況別に並べます。
退職届のほうが噛み合う場面
- 辞める意思がすでに固まっている
- 会社が引き止めてくる、話がなかなか進まない
- 退職日を 民法627条の2週間 から数えて確定させたい
- 出社せずに進めたい
退職願のほうが噛み合う場面
- まだ迷いがあり、条件次第では残る可能性がある
- 上司との関係を保ちながら相談の形で始めたい
- 会社に「退職願を出すこと」という慣行がある
辞めるかどうかまだ決めきれていない段階なら、書類より先に 辞めるべきか迷った時のチェックリスト を見ておくほうが順番として自然です。
書き方の要点
どちらの型でも、書類として必要な項目は共通しています。
- 表題(退職届/退職願)
- 提出日
- 宛名(一般には会社の代表者宛て)
- 所属・氏名
- 退職理由(自己都合なら「一身上の都合により」が定型)
- 退職日
当サイトの 退職届の作成ツール は、会社名・代表者名・所属・氏名・提出日・退職日を入力すると標準文面ができ、そのまま印刷・PDF保存・テキストのコピーができます。無料・登録不要で、入力内容はブラウザ内だけで処理され、サーバーには送信されません。文面は「標準(一身上の都合により)」「引き継ぎに一言添える」「簡潔」から選べます。
日付の書き方で迷う場合は 退職届の日付は提出日?退職日? を、他社のオンラインツールとの比較は 退職届のオンラインツール比較 をご覧ください。
出したあとに気が変わったら
「退職願なら撤回できる」と言われますが、実際には会社の対応と経緯によります。 承諾の意思表示がすでにされている場合や、後任の採用が進んでいる場合など、事情によって扱いは変わります。
確実なのは、出す前に決めておくことです。引き止められて条件を提示された場合の考え方は 退職を認めてもらえない・辞めさせてもらえない時 にまとめています。
受け取ってもらえない場合
差し出したのに受け取らない、という対応をされることがあります。民法97条2項には次の定めがあります。
相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
実務上は、届いたことが後から確認できる形で送るのが安全策です。退職届を郵送で出す時の送り方と添え状・内容証明で退職届を送る手順・退職届を受け取ってもらえない時 をご覧ください。
なお、退職日や有給の扱いで会社と話し合う必要が出た場合、それができるのは労働組合または弁護士が運営するタイプです(運営元タイプの違い)。書類を出すだけで済むのか、交渉が要りそうかを先に見立てておくと、選ぶタイプが決まります。
まとめ
- 3つの言葉に法律上の定義はなく、実務上の使い分け。辞表は役員・公務員が使う言葉
- 違いの核心は撤回の余地。退職願は承諾までの間に状況が動きうる、退職届は一方的な意思表示として扱われる
- 裏づけは民法627条1項(解約の申入れ)と97条1項(到達で効力)
- ただし、題名だけで型が決まるとは限らない。文面と経緯もあわせて見られる
- 迷いが残っているなら退職願、固まっているなら退職届という整理が実務的
名前で悩む時間より、どちらの状態にいるのかを決めるほうが先です。決まったら、書類そのものは数分で作れます。
退職後の給付金(失業給付)について
退職理由の書き方で給付が変わるのでは、と気にする人もいるかもしれませんが、注意が必要です。失業給付(雇用保険の基本手当)の申請は、退職後にご本人がハローワークで行う手続きで、退職代行が代理申請することはできません。 受給の可否・金額・時期は、加入期間や離職理由などご自身の状況によって異なります。
当サイトは制度の概要や考え方を情報として紹介するにとどめ、申請の代行や受給の保証は行いません。 具体的な対象可否や手続きは、ハローワークなどの公的機関や、社会保険労務士をはじめとする専門家にご確認ください。「必ずもらえる」「受給を保証する」といった断定的な案内には十分ご注意ください。
あわせて読みたい
退職から転職までの進み方
伝えたあとに会社が受け取ってくれないときは、次の段階に条文と手順をまとめています。 会社が辞めさせてくれないときの記事を見る →


