退職した年の年末調整と確定申告はどちらになるか
会社員でいるあいだ、税金の精算は年末調整で自動的に終わっていました。年の途中で辞めると、その自動処理が途中で止まります。そのあと自分で何かする必要があるのか、しなくていいのか。ここが分かりにくいところです。
この記事は法令と国税庁の公表資料を整理したものであり、税務上の助言ではありません。個別の判断は所轄の税務署にご確認ください。
年末調整は「その年最後の給与を払う人」がやる
まず、年末調整とは何をしている手続きなのかを条文で確認します。所得税法190条は、年末調整の対象を次のように書き出しています。
給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、第一号に規定するその年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が二千万円以下であるものに対し、その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合(中略)において、同号に掲げる所得税の額の合計額がその年最後に給与等の支払をする時の現況により計算した第二号に掲げる税額に比し過不足があるときは、その超過額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収すべき所得税に充当し(後略)
条文が置いている条件は「その年最後に給与等の支払をする場合」です。9月に辞めた会社は、その人にとって「その年最後の給与を払う会社」かどうかが、12月の時点まで分かりません。だから辞めた会社では年末調整をしない、という運用になります。
分かれ目は「同じ年に再就職したか」
国税庁のNo.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき(2026-09-06 確認)は、この分岐をはっきり書いています。
| その年のうちに | どうなるか |
|---|---|
| 再就職した | 新しい勤務先が「前の勤務先の給与を含めて年末調整をすることになっている」 |
| 再就職しなかった | 年末調整を受けられないため、確定申告で精算する |
再就職した場合に手続きが要らないわけではありません。新しい勤務先に前職の源泉徴収票を渡す必要があります。手元に届いていない場合の進め方は 源泉徴収票が届かない時は? にまとめました。
「戻ってくる」ことが多いのはなぜか
同ページは、還付が生じる仕組みについて、給与からの源泉徴収は概算で行われているため「所得税及び復興特別所得税が納め過ぎとなる場合がある」としています。
毎月の天引きは「1年間その給与が続く前提」で計算されているため、年の途中で収入が止まると、納めすぎの状態で年が終わります。確定申告は、この差額を戻す手続きになります。
さらに、退職後に自分で払った国民健康保険料・国民年金保険料は社会保険料控除の対象になり、任意継続の保険料も同様です。辞めたあとに払った分が控除に乗るため、精算の効果はその分だけ大きくなります。任意継続の保険料の決まり方は 任意継続の保険料はどう決まるか で扱いました。
期限は「3月15日まで」ではない
確定申告というと3月15日の期限を思い浮かべますが、還付を受けるための申告はこの期限に縛られません。同ページには次のように書かれています。
中途退職した年の翌年以降5年以内であれば行うことができる
具体的には「翌年1月1日から5年間提出することができます」とされています。年をまたいでから気づいても間に合うということです。
一方で、申告が「必要」になる場合は別です。国税庁のNo.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(2026-09-06 確認)は、確定申告が必要な給与所得者として複数のケースを挙げており、そのなかには「給与の年間収入金額が2,000万円を超える人」「給与を2か所以上から受けていて各種所得金額の合計額が20万円を超える人」などが含まれています。副業があった年や、年内に2社から給与を受けた年は、還付の話とは別に確認が要ります。
手元に集めておくもの
- 退職した会社の源泉徴収票
- 退職後に自分で納めた国民健康保険料・国民年金保険料の領収書等
- 生命保険料控除・地震保険料控除の控除証明書
- 還付金を受け取る口座の情報
なお、退職金を受け取った場合は、給与とは別枠の「退職所得」として扱われます。この扱いは 退職金の税金は? と 「退職所得の受給に関する申告書」を出さないとどうなるか にまとめています。
まとめ
- 年末調整は「その年最後に給与を払う会社」が行う(所得税法190条)。辞めた会社ではやらない
- 同じ年に再就職したなら、新しい勤務先が前職分を含めて年末調整する
- 再就職しなかったなら、確定申告で精算する
- 天引きは概算なので納めすぎになっていることが多い
- 還付のための申告は翌年1月1日から5年間できる
- 副業・2か所給与などがある年は、還付とは別に「申告が必要な人」に当たるか確認する
年内に転職するかどうかで手続きが変わるので、転職の時期が決まった時点で、この分岐だけ先に確かめておくと楽になります。時期の組み立ては 在職中の転職と退職のタイミング も参考にしてください。
出典(すべて 2026-09-06 に確認)
- e-Gov 法令検索「所得税法」190条
- 国税庁「No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき」
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
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