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任意継続の保険料はどう決まるか|上限32万円で頭打ちになる仕組み

退職後の健康保険で任意継続を選ぶかどうかを決めるとき、いちばん知りたいのは「結局いくら払うのか」だと思います。よく言われるのは「在職中の2倍」ですが、この説明はある金額から先では当てはまりません

なお、任意継続と国民健康保険のどちらを選ぶかという比較そのものは 退職後の健康保険・年金の手続きと任意継続の選択 にまとめています。

この記事は法令と公的機関の公表資料を整理したものであり、税務・保険の助言ではありません。加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合)によって扱いが異なる場合があります。実際の金額はご自身の保険者にご確認ください。

「2倍になる」と言われる理由

在職中の健康保険料は、会社と本人が折半して負担しています。退職して任意継続被保険者になると、この会社が負担していた分も自分で払うことになります。給与明細に出ていた天引き額のおおよそ2倍、という説明はここから来ています。

保険料の算定方法そのものは、健康保険法157条が次のように定めています。

任意継続被保険者に関する保険料は、任意継続被保険者となった月から算定する。 2 前項の場合において、各月の保険料の算定方法は、前条の例による。

つまり、在職中の被保険者と同じ計算式(標準報酬月額 × 保険料率)を使う、という構造です。率が変わるのではなく、負担する人が変わるという理解になります。

率そのものは都道府県ごとに違います。協会けんぽの令和8年度保険料率のお知らせ(2026-09-06 確認)によると、令和8年度の平均保険料率は9.9%で、変更は「令和8年4月納付分から」適用されます。40歳以上65歳未満の方はこれに介護保険料率(1.62%)が加わります。自分の支部の率を見ないと金額は出ません。

上限がある:健康保険法47条1項

ここが見落とされやすいところです。任意継続の標準報酬月額には、同法47条1項で上限が置かれています。

任意継続被保険者の標準報酬月額については、第四十一条から第四十四条までの規定にかかわらず、次の各号に掲げる額のうちいずれか少ない額をもって、その者の標準報酬月額とする。 一 当該任意継続被保険者が被保険者の資格を喪失したときの標準報酬月額 二 前年(一月から三月までの標準報酬月額については、前々年)の九月三十日における当該任意継続被保険者の属する保険者が管掌する全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額(中略)を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額

条文が言っているのは「退職時の等級」と「全加入者の平均」の低いほうを取るということです。給与が平均より高かった人ほど、この2号でブレーキがかかります。

令和8年度の上限は32万円

その「平均」の実額を、協会けんぽが毎年公表しています。【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について(2026-09-06 確認)には、次のように書かれています。

令和7年9月30日時点における全ての協会けんぽの被保険者の標準報酬月額の平均額は318,100円となります。(この額は、標準報酬月額の第23級:32万円に該当します。)

項目 出どころ
令和8年度の任意継続の標準報酬月額の上限 32万円(第23級) 協会けんぽ お知らせ
その根拠となる平均標準報酬月額 318,100円 同上(令和7年9月30日時点)
前年度(令和7年度)の上限 32万円 協会けんぽ お知らせ

退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた人は、32万円で計算されるということになります。逆に言えば、標準報酬月額が32万円以下だった人には、この上限は関係しません。素直に「天引き額のおよそ2倍」に近づきます。

なお、健康保険組合に加入していた場合は、同条2項で組合の規約による別の定めが認められています。協会けんぽの32万円をそのまま自分の組合に当てはめないほうが安全です。

期限は20日、続けられるのは2年

金額と同じくらい効くのが期限です。同法37条1項は次のように定めています。

第三条第四項の申出は、被保険者の資格を喪失した日から二十日以内にしなければならない。ただし、保険者は、正当な理由があると認めるときは、この期間を経過した後の申出であっても、受理することができる。

原則は20日ですが、ただし書きのとおり、正当な理由があれば期限後の申出が受理される場合もあります。過ぎてしまっても、まず保険者に事情を伝えるのが先です。

そして、いつまで続くのかは38条1項が定めており、1号に「任意継続被保険者となった日から起算して二年を経過したとき」と資格喪失事由が置かれています。あわせて同項7号には、次の事由もあります。

任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を、厚生労働省令で定めるところにより、保険者に申し出た場合において、その申出が受理された日の属する月の末日が到来したとき。

「一度入ったら2年間抜けられない」という形にはなっていない、というのが条文上の姿です。

退職日をいつにするかでも変わる

任意継続を選ぶかどうかとは別に、退職日そのものが最初の月の負担に影響します。この論点は 月末退職と月初退職はどちらが得? で条文にあたって整理しました。日付の並びを確かめたい場合は 退職日の逆算カレンダー、退職後の支出全体を見積もりたい場合は 退職後の固定費シミュレーター が使えます。

まとめ

  • 任意継続の保険料は、在職中と同じ計算式で、会社負担分も自分で払う形になる(健康保険法157条)
  • 標準報酬月額は「退職時の額」と「全加入者の平均」の低いほう(同法47条1項)
  • 協会けんぽの令和8年度の上限は32万円(根拠は令和7年9月30日時点の平均318,100円)
  • 申出は資格喪失日から20日以内(同法37条1項)、期間は2年(同法38条1項1号)
  • 健康保険組合の場合は規約で別の定めがあり得る

「2倍になる」という説明は、上限に当たらない人にだけ当てはまる目安です。自分がどちら側かは、退職時の標準報酬月額が32万円を超えていたかどうかで分かれます。

出典(すべて 2026-09-06 に確認)

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