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会社都合で辞めた人の国民健康保険料が下がる仕組み|給与所得を「100分の30」で見る

退職して国民健康保険に切り替えたとき、最初の保険料の額に驚く方は少なくありません。保険料は前年の所得で計算されます。収入が止まった年でも、働いていた年の所得で請求が来るからです。

ただし、離職の理由によっては、この計算自体が変わる仕組みがあります。その仕組みを条文で確認します。

この記事は法令の規定を整理したものであり、個別の該当可否を判断するものではありません。実際の軽減の適用・保険料額は、お住まいの市区町村の国民健康保険の窓口にご確認ください。

何が軽減されるのか:「所得を3割で見る」

国民健康保険法施行令29条の7の2第1項に、読み替えの定めがあります。保険料を算定するときの読み替えです。そのなかに次の一節があります。

次条第二項に規定する特例対象被保険者等の総所得金額に所得税法第二十八条第一項に規定する給与所得が含まれている場合においては、当該給与所得については、同条第二項の規定によつて計算した金額の百分の三十に相当する金額によるものとする。

保険料そのものを何割引きにする、という書き方ではありません。保険料の計算に使う「前年の給与所得」を、100分の30として計算するという定めです。給与所得が300万円だった人なら、90万円として計算される、という形になります。

保険料の減免を申請する制度ではありません。計算のもとになる数字が置き換わるので、効き方が大きくなりやすいのが特徴です。

対象になるのは誰か

同条2項は、対象となる「特例対象被保険者等」を次のように定めています。

一 雇用保険法第二十三条第二項に規定する特定受給資格者 二 雇用保険法第十三条第三項に規定する特定理由離職者であつて受給資格を有するもの

前者は倒産・解雇などによって離職した人を指します。後者は雇止めなどによって離職した人を指す区分です(雇用保険法上の定義)。例は 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要 にあります。ハローワークインターネットサービスの資料を2026-09-06 に確認しました。前者の例はこう書かれています。「解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者」です。後者の例はこう書かれています。「期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)」です。

自分がどちらに当たるかは、失業給付の手続きのなかで決まります。 具体的には、離職票に記載され、ハローワークで判定された離職理由が根拠になります。自己都合か会社都合かで失業給付そのものがどう変わるか。それは 自己都合と会社都合で失業給付はどれだけ変わるか にまとめました。離職理由の記載に納得がいかないときの動き方は 離職票が届かないときは の後半でも触れています。

いつまで続くのか

同項の括弧書きは、対象者の範囲を次のように区切っています。

これらの者の雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第十四条第二項第一号に規定する受給資格(以下この項において「受給資格」という。)に係る同法第四条第二項に規定する離職の日の翌日の属する年度の翌年度の末日までの間にある者に限る

言い換えると、離職日の翌日が属する年度と、その次の年度の末日までが対象期間です。

離職日 対象になる期間(年度末=3月31日)
2026年5月 2026年度 + 2027年度末(2028年3月31日)まで
2027年2月 2026年度 + 2027年度末(2028年3月31日)まで

年度末に近い時期に辞めた人ほど、実質的に短くなるという形になります。年度をまたぐかどうか。そこで結果が変わります。退職日の候補が複数ある場合は数えておく価値があります。日付の並べ方は 退職日の逆算カレンダー で確認できます。

高額療養費の区分にも効く

同じ「100分の30」の読み替えは、保険料の計算だけに置かれているわけではありません。同令29条の3第2項にも同じ扱いがあります。高額療養費の算定基準額を決める基準所得額についての定めです。

その算定の際第二十九条の七の二第二項に規定する特例対象被保険者等(中略)の総所得金額に所得税法第二十八条第一項に規定する給与所得が含まれている場合においては、当該給与所得については、同条第二項の規定によつて計算した金額の百分の三十に相当する金額によるものとする。

医療費が高額になったときの自己負担の上限を決める区分があります。そこにも同じ考え方が及ぶという構造です。

手続きは自動ではない

条文は「特例対象被保険者等である場合における」適用を定めています。市区町村は、それを自動では知りません。本人が離職の事実を示す書類を出すことが手段になります。実務上は、国民健康保険の加入手続きの際に提示します。雇用保険受給資格者証などを窓口へ出す形になります。

任意継続と国民健康保険のどちらを選ぶか。比べているところなら、この軽減が効くかどうかで結論がひっくり返ることがあります。任意継続側の金額の決まり方は 任意継続の保険料はどう決まるか にまとめました。選択の全体像は 退職後の健康保険・年金の手続きと任意継続の選択 にまとめています。

軽減の中身と、対象になる期間

  • 軽減の中身は「保険料が何割引き」ではなく、前年の給与所得を100分の30として計算する(国民健康保険法施行令29条の7の2第1項)
  • 対象は特定受給資格者と、受給資格のある特定理由離職者(同条2項)
  • 期間は離職日の翌日が属する年度の翌年度の末日まで
  • 同じ読み替えは高額療養費の区分にも及ぶ(同令29条の3第2項)
  • 判定のもとは離職票とハローワークでの離職理由。窓口への提示が必要

自己都合か会社都合かは、失業給付の金額だけの話ではありません。健康保険料の計算式そのものが変わるという点は、押さえておいて損がないところです。

出典(すべて 2026-09-06 に確認)

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