退職エラビ
使い方ガイド公開

保険証を返したあと病院にかかるとどうなるか|資格は「切れっぱなし」にならない

退職日に健康保険証を返却すると、手元に「医療を受けられる証明」が何もない状態になります。次の保険への切り替えが済むまでに通院の予定があるとします。ここは気がかりだと思います。

制度の側では、資格が空白になる作りにはなっていません。手元の書類が追いつかないだけです。その構造は条文に書かれています。

この記事は法令の規定を整理したものであり、個別の受診・給付について判断するものではありません。実際の手続きは、お住まいの市区町村の窓口や加入する保険者にご確認ください。

資格は「翌日から」つながっている

会社の健康保険をやめると、その翌日から国民健康保険の被保険者になります。この接続は、国民健康保険法の2つの条文の組み合わせでできています。

まず6条1号は、国民健康保険の適用除外を次のように定めています。

健康保険法(大正十一年法律第七十号)の規定による被保険者。ただし、同法第三条第二項の規定による日雇特例被保険者を除く。

そして7条が、資格を取得する時期を定めています。

都道府県等が行う国民健康保険の被保険者は、都道府県の区域内に住所を有するに至つた日又は前条各号のいずれにも該当しなくなつた日から、その資格を取得する。

会社の健康保険の被保険者でなくなった日は、「前条各号のいずれにも該当しなくなつた日」に当たります。だからその日から自動的に国民健康保険の被保険者になっているという建て付けです。届出をした日からではありません。

空白ができるのは資格ではありません。空白ができるのは手続きと書類のほうだけです

だから保険料も、届け出た日からではない

同じ理屈が、負担の側にも働きます。資格は退職の翌日から始まっています。だから届出が遅れても、その分の保険料が消えるわけではありません。あとからまとめて請求される形になります。

届出については、同法9条1項が次のように定めています。

世帯主は、厚生労働省令で定めるところにより、その世帯に属する被保険者の資格の取得及び喪失に関する事項その他必要な事項を市町村に届け出なければならない。

「遅れると入れない」ではなく「遅れても入っているが、手続きが滞る」という関係です。窓口では14日以内の届出が案内されるのが一般的です。

資格を示す書面を出してもらえる

保険証が手元にない状態でも、資格を確かめてもらう道は条文に用意されています。同法9条2項は次のように定めています。

世帯主と同一の世帯に属する全て又は一部の被保険者が第三十六条第三項に規定する電子資格確認を受けることができない状況にあるときは、当該世帯主は、厚生労働省令で定めるところにより、当該世帯主が住所を有する市町村に対し、当該状況にある被保険者の資格に係る情報として厚生労働省令で定める事項を記載した書面の交付又は当該事項の電磁的方法(中略)による提供を求めることができる。

そして3項は、この書面を提示すれば確認を受けられるとしています。カードが届く前でも、窓口で受け取れる書面があるという構造です。実際に何という名前の書類がいつ出るかは、市区町村ごとの運用しだいで一律ではありません。加入の届出をする窓口でそのまま聞くのが早いと思います。

いったん全額払った場合の療養費

切り替えが間に合わず、医療機関でいったん全額を支払うことがあります。その扱いも条文にあります。同法54条2項です。

市町村及び組合は、被保険者が電子資格確認等により被保険者であることの確認を受けないで保険医療機関等について診療又は薬剤の支給を受けた場合において、当該確認を受けなかつたことが、緊急その他やむを得ない理由によるものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給するものとする。ただし、当該被保険者の属する世帯の世帯主又は組合員が第五十四条の三第一項又は第二項本文の規定の適用を受けている間は、この限りでない。

支給する、という書き方になっている点が特徴です。同条1項は「支給することができる」で、ここと対になっています。ただし「緊急その他やむを得ない理由によるものと認めるとき」という条件が付いています。認めるかどうかの判断は保険者側にあります

会社の健康保険を任意継続した場合も同じです。健康保険法87条1項に同趣旨の療養費の定めがあります。どちらの制度を選んでも、この受け皿自体はあるという形です。

いずれにせよ、領収書と診療明細書は取っておくことになります。

実務としてやること

  1. 退職日に保険証を返す(返却物の整理は 退職時に受け取る書類の一覧 を参照)
  2. できるだけ早く、市区町村で国民健康保険の加入を届け出る(または任意継続を申し出る。期限は資格喪失日から20日以内)
  3. 保険証が届く前に受診が必要なら、資格を示す書面が出せるか窓口で確認する
  4. 全額払った場合は、領収書・診療明細書を保管して、あとから療養費の請求ができるか相談する

どちらの制度を選ぶかで迷っている場合は 退職後の健康保険・年金の手続きと任意継続の選択 にまとめています。任意継続の金額は 任意継続の保険料はどう決まるか にあります。会社都合で辞めた場合の国民健康保険料は 会社都合で辞めた人の国民健康保険料が下がる仕組み を見てください。

資格は退職の翌日から、書類だけが遅れて届く

  • 会社の健康保険をやめたその日から、国民健康保険の被保険者になる(国民健康保険法6条1号・7条)
  • 資格に空白は生じない。空白ができるのは手続きと手元の書類のほう
  • 保険料も資格の始まりからかかるので、届出が遅れても消えない
  • カードが届く前でも、資格を示す書面の交付を求められる(同法9条2項・3項)
  • いったん全額払った場合は療養費の仕組みがある(同法54条2項、健康保険法87条1項)。領収書は保管する

「保険証がないから病院に行けない」ではありません。「行けるが、立て替えになる可能性がある」という理解が実態に近いところです。

出典(すべて 2026-09-06 に確認)

あわせて読みたい

退職から転職までの進み方

  1. 済んだ段階辞めていいか迷う
  2. 済んだ段階言い出せない
  3. 済んだ段階辞めさせてくれない
  4. いまここ辞めた後のお金
  5. STEP 5転職の準備

お金の見通しが立ったら、次は転職活動の段取りを組む段階です。 転職の準備の記事を見る →