退職して国民年金が払えないとき|免除・納付猶予と「失業の特例」
退職して厚生年金から国民年金の第1号被保険者に切り替わると、保険料の払い方が変わります。それまで給与から引かれていた保険料を、自分で納付書で払うことになります。収入が止まっている時期に、この負担は重く感じられます。
未納のまま置いておくのと、免除の手続きをするのとでは、あとに残るものが同じではありません。その違いは条文と公表資料からたどれます。
この記事は法令と日本年金機構の公表資料を整理したものであり、個別の可否を判断するものではありません。申請の要否・結果は年金事務所または市区町村の窓口にご確認ください。
いくら払うことになるのか
日本年金機構が金額を公表しています。国民年金保険料を2026-09-06 に確認しました。保険料は「1カ月あたり17,920円です(令和8年度)」とされています。納付期限は「納付対象月の翌月末日」です。月末が休場日の場合は、翌月最初の営業日が期限になります。
月17,920円を、収入のない時期に毎月用意するのは簡単ではありません。ここで使えるのが免除・納付猶予の制度になります。
制度の骨格:国民年金法90条
国民年金法90条1項は、免除を次のように定めています。
次の各号のいずれかに該当する被保険者等から申請があつたときは、厚生労働大臣は、その指定する期間(中略)に係る保険料につき、既に納付されたものを除き、これを納付することを要しないものとし、申請のあつた日以後、当該保険料に係る期間を第五条第三項に規定する保険料全額免除期間(中略)に算入することができる。ただし、世帯主又は配偶者のいずれかが次の各号のいずれにも該当しないときは、この限りでない。
読みどころは2つあります。ひとつは「申請があつたとき」という書き方です。免除は自動では始まりません。もうひとつは「保険料全額免除期間に算入する」という部分で、未納とは扱いが別になります。
末尾のただし書きも見落としやすい箇所です。世帯主・配偶者の所得も基準を満たしている必要があります。本人が無収入でも、同居の世帯主や配偶者に所得があると免除にならないことがあります。
同項1号は、判定に使う所得を「当該保険料を納付することを要しないものとすべき月の属する年の前年の所得」としています。退職直後の人にとって、この基準は都合がよくありません。前年はまだ働いていたからです。
「失業の特例」で前年所得を見ない
その問題に対応しているのが、失業等による特例免除です。日本年金機構の国民年金保険料の免除・納付猶予制度に説明があります。この記載は2026-09-06 に確認しました。失業・倒産・事業廃止などの事実が確認できれば、失業した人の前年所得にかかわらず免除・納付猶予を受けられます。
要になるのは、離職票や雇用保険受給資格者証など、失業の事実が確認できる書類です。退職時に受け取る書類の全体像は 退職時に受け取る書類の一覧 にまとめました。離職票が届かないときの動き方は 離職票が届かないときは にあります。
所得の基準と、猶予との違い
同じページに、審査で使う所得の基準が示されています。
| 区分 | 前年所得の基準 |
|---|---|
| 全額免除・納付猶予 | (扶養親族等の数+1)× 35万円 + 32万円 |
| 4分の3免除 | 88万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等 |
| 半額免除 | 128万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等 |
| 4分の1免除 | 168万円 + 扶養親族等控除額 + 社会保険料控除額等 |
納付猶予の対象は「20歳以上50歳未満の方」とされています。判定に使うのは本人と配偶者の前年所得です。免除と違い、世帯主の所得を見ません。
申請できる期間は「保険料の納付期限から2年を経過していない期間」とされています。さかのぼって申請できる余地があるということになります。
免除と猶予で「あとに残るもの」が違う
いちばん見落とされやすいのがここです。同じページによれば、年金額への反映は次のようになります。
| 区分 | 保険料を全額納付した場合と比べた年金額 |
|---|---|
| 全額免除 | 2分の1 |
| 4分の3免除 | 8分の5 |
| 半額免除 | 8分の6 |
| 4分の1免除 | 8分の7 |
| 納付猶予 | 反映されない |
納付猶予は「あとで払う約束をして待ってもらう」形にすぎません。そのままにすると年金額には乗りません。免除も猶予も、10年以内であれば追納できる制度が用意されています。
未納のまま放置した期間は、この表のどこにも入りません。手続きをしたかどうかが、そのまま将来の差になるという構造です。
手続きの順番
- 退職日の翌日から、市区町村の窓口で第1号被保険者への種別変更を届け出る(国民年金法12条1項)
- その場で免除・納付猶予の申請もできるか聞く
- 失業を理由にする場合は、離職票・雇用保険受給資格者証などを持参する
- 結果は後日、通知で届く
健康保険の切り替えと同じ窓口で済むことが多く、まとめて1回で行くのが現実的です。健康保険側の選択肢は 退職後の健康保険・年金の手続きと任意継続の選択 にまとめました。退職後に届く納付書の全体像は 退職後に届く納付書は3つ にあります。
申請しなければ何も残らない
- 令和8年度の国民年金保険料は月17,920円、納付期限は翌月末日
- 免除・猶予は申請しないと始まらない(国民年金法90条1項)
- 判定は原則前年所得だが、失業の特例で前年所得を見ない扱いになり得る
- 申請は納付期限から2年を経過していない期間まで
- 全額免除は年金額に2分の1反映、納付猶予は反映されない
- 未納のまま置くのが、いちばん何も残らない
払えないこと自体は、手続きで扱える状態です。放置と免除は別物、という点だけ押さえておけば十分だと思います。
出典(すべて 2026-09-06 に確認)
- e-Gov 法令検索「国民年金法」90条1項・12条1項
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除・納付猶予制度」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
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