退職後に家族の扶養に入れるか|収入の見方が2つある
退職して収入が途切れるとき、「家族の扶養に入れないか」を考える方は多いと思います。ところが調べ始めると、130万円という数字と103万円・58万円という数字が同時に出てきて、話がかみ合わなくなります。
理由ははっきりしていて、「扶養」という言葉が2つの別々の制度で使われているからです。この記事では、その2つを分けて確認します。
この記事は公的機関の公表資料と条文を整理したものであり、税務・保険の助言ではありません。加入している健康保険組合によって基準が異なる場合があります。個別の判定は保険者・勤務先・税務署にご確認ください。
2つの「扶養」は数えているものが違う
| 健康保険・年金の扶養 | 税の扶養 | |
|---|---|---|
| 決めるところ | 保険者(協会けんぽ・健保組合)/日本年金機構 | 税務署(国税庁の基準) |
| 主な効果 | 保険料の自己負担が生じない | 扶養する側の所得税・住民税が下がる |
| 数える期間 | これからの1年の見込み | その年の1月〜12月の実績 |
| 判定の時点 | 認定の申請時 | その年の12月31日の現況 |
期間の取り方が正反対である点が、いちばん効く違いです。退職直後は、税の側では「今年もう働いた分」が残っているのに、健康保険の側では「これから収入がない」と見てもらえる、ということが起こります。
健康保険の扶養:130万円・150万円・180万円
協会けんぽの退職後の健康保険について(2026-09-06 確認)では、被扶養者の収入要件について次の趣旨が示されています。
- 原則は年間収入が130万円未満であること
- 60歳以上の方、または障害厚生年金を受けられる程度の障害を有する方は180万円未満
- 19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の方は150万円未満
- 同一世帯であれば、あわせて被保険者の年間収入の2分の1未満であること
- 別居の場合は、被保険者からの援助による収入額より少ないこと
同ページには、令和8年4月からの任意継続被扶養者の要件について、次のように書かれています。
労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入が130万円未満であり、かつ、ほかの収入が見込まれず、認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合には被保険者の年間収入の2分の1未満であると認められる場合には、原則として被扶養者に該当するものとして取り扱います。
「見込まれる」という語が繰り返されている点に注目してください。健康保険側は、過去に稼いだ額ではなく、これから先の見込みで見る建て付けになっています。
年金の扶養は「配偶者」だけ
年金の側は範囲がさらに狭く、対象は配偶者に限られます。国民年金法7条1項3号は、第3号被保険者を次のように定義しています。
第二号被保険者の配偶者(中略)であつて主として第二号被保険者の収入により生計を維持するもの(中略)のうち二十歳以上六十歳未満のもの
つまり、親や兄弟の扶養に入っても、年金は第3号にはならないという構造です。会社員である配偶者がいない場合、退職後は自分で国民年金の第1号被保険者として保険料を納めることになります。払えない見込みがあるときの選択肢は 退職して国民年金が払えないとき にまとめました。
税の扶養は「その年の合計所得金額」
税の側は、国税庁のNo.1180 扶養控除(2026-09-06 確認)が扶養親族の要件を挙げており、そのひとつが次のように書かれています。
年間の合計所得金額が48万円以下(注)(令和元年分以前は38万円以下)であること。
注として、次の記載があります。
令和7年12月1日に施行され、令和7年分から適用される金額は「58万円以下」です。
判定の時点についても、同ページは「その年の12月31日(納税者が年の中途で死亡しまたは出国する場合は、その死亡または出国の時)の現況で」判定するとしています。
年の途中で退職した年は、その年の給与がすでに積み上がっているので、税の扶養には入れないことが起こり得ます。それでも健康保険の扶養には入れる、という組み合わせは珍しくありません。片方がだめでも、もう片方をあきらめる必要はない、というのがこの記事でいちばん言いたいところです。
失業給付をもらうと扶養から外れることがある
もうひとつ、退職後に特有の論点があります。健康保険の「年間収入」の見込みには、雇用保険の基本手当(失業給付)が含まれるものとして扱われるのが一般的です。日額がいくらになるかで判断が変わるため、先に受給額の見当をつけてから扶養の申請をするか決めるという順番になります。おおよその額は 失業手当シミュレーター で確認できます。受給の条件そのものは 失業給付の受給条件 にまとめています。
まとめ
- 「扶養」は健康保険・年金と税で別制度。基準も、数える期間も違う
- 健康保険はこれからの見込みで見る(原則130万円未満、60歳以上・障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満は150万円未満)
- 年金の第3号は配偶者だけ(国民年金法7条1項3号)
- 税はその年の合計所得金額で見る(国税庁 No.1180。令和7年分から58万円以下)
- 退職した年は「税はだめだが健康保険はいける」が起こり得る
- 失業給付を受け取る予定があるなら、金額の見当を先につける
数字を並べる前に、どちらの制度の話をしているのかを先に決めると、調べ物がずいぶん短くなります。
出典(すべて 2026-09-06 に確認)
- 全国健康保険協会「退職後の健康保険について(任意継続被扶養者となるための要件)」
- e-Gov 法令検索「国民年金法」7条1項3号
- 国税庁「No.1180 扶養控除」
あわせて読みたい
退職から転職までの進み方
お金の見通しが立ったら、次は転職活動の段取りを組む段階です。 転職の準備の記事を見る →


