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有給消化中に次の会社で働き始めてよいか:在籍が重なる期間に効く条文

転職先の入社日が決まり、今の会社では有給消化に入る。このとき「消化中はもう出社しないのだから、次の会社で働き始めてもいいのでは」と考える人がいます。

ここで見落とされやすいのが、有給消化中も今の会社に在籍しているという点です。出社していないだけで、労働契約は退職日まで続いています。

この記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。実際に認められるかどうかは、勤務先の就業規則の定めや個別の事情によって変わります。個別の判断は勤務先の規程や、労働基準監督署・社会保険労務士など専門家にご確認ください。

在籍が終わるのは退職日

労働契約が終わる日について、民法627条1項はこう定めています。冒頭のとおり、この条文が対象にしているのは「期間の定めのない雇用」です。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

終わるのは「雇用」であって、出社ではありません。 有給消化は、在籍したまま労働義務が免除されている状態です。

期間の定めがある契約(契約社員・派遣など)には、この条文は当たりません。 終了日は契約で定めた期間の満了で決まり、期間の途中の解除については同法628条が「やむを得ない事由があるとき」の定めを置いています。

退職日と最終出社日の関係は 有給を全部使って出社ゼロで辞められるか に整理しました。

したがって、消化中に次の会社で働き始めると、2社に在籍している期間ができます。 これは制度上、副業・兼業と同じ形になります。

労働時間は事業場をまたいで通算される

在籍が重なる期間にまず効くのが、労働基準法38条1項です。

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

別の会社であっても、労働時間に関する規定の適用では合算されると書かれています。同法32条は労働時間の上限を次のように置いています。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

有給消化中は今の会社では労働していないため、実際に通算される時間は次の会社の分だけになるのが通常です。ただし、消化中に今の会社から呼ばれて実際に働いた日があると、その日は両方が乗ります。割増賃金を定めた37条1項もあわせて効いてくる場面なので、「出社ゼロのはずが呼び出される」ケースでは意識しておく点です。

就業規則に定めがあるかを先に見る

副業・兼業について就業規則で定めることは、労働基準法89条10号が想定しています。

前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

まず確認するのは、今の会社の就業規則に兼業についての条があるかどうかです。届出制なのか、許可制なのか、そもそも定めが無いのかで、取るべき手順が変わります。

あわせて、労働契約法3条4項があります。

労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

在籍している間は、契約を守り誠実に権利を行使することが双方に求められるという一般的な定めです。競合他社への就職や、在職中に知った情報の扱いが問題になりやすいのはこの周辺です。就業規則に秘密保持や競業についての条があるなら、消化中もその条が生きています。

副業・兼業についての一般的な考え方は、厚生労働省の副業・兼業のページにまとまっています。

社会保険と雇用保険は「重なる期間」の扱いが別にある

在籍が2社にまたがると、健康保険・厚生年金・雇用保険の資格の扱いが問題になります。ここは会社ごとの手続きではなく、制度側の決まりで動く部分です。

ここは会社の人事に聞くだけでは食い違いが出やすいところです。今の会社・次の会社の双方に、入社日と退職日を正確に伝えたうえで、公的機関の案内と突き合わせるのが確実です。退職後の保険と年金の全体像は 退職後の健康保険と年金はどうする にまとめています。

揉めにくい進め方

  1. 今の会社の就業規則で、兼業・秘密保持・競業の条を確認する
  2. 次の会社に、現職の退職日を正確に伝える。 「最終出社日」と「退職日」は別なので、退職日の方を伝えます
  3. 入社日を退職日の翌日以降に置けないか相談する。 在籍が重ならなければ、この記事の論点はほぼ消えます
  4. 重なる形にするなら、双方に書面で伝えておく。 保険の手続きが片方で止まるのを防げます
  5. 消化中に呼び出される可能性があるなら、その日の扱いを先に決めておく

在籍中の転職活動の段取りは 在職中に内定が出た後の段取り、退職と入社の時期の組み方は 在職中に転職活動をするタイミング にまとめています。

取り扱いについて会社との説明が食い違う場合は、厚生労働省が各都道府県労働局に置いている総合労働相談コーナーが相談先になります。

まとめ

  • 有給消化中も在籍は続いている期間の定めのない雇用では、終わるのは民法627条1項でいう「雇用」=退職日(期間の定めがある契約は期間の満了で終わり、途中の解除は同法628条)
  • 次の会社で働き始めると2社に在籍する期間ができ、制度上は副業・兼業と同じ形になる
  • 労働基準法38条1項により、労働時間は事業場が違っても通算される
  • 就業規則に兼業・秘密保持・競業の条があるかを先に確認する(89条10号)
  • 労働契約法3条4項により、在籍中は信義に従い誠実に権利を行使することが双方に求められる
  • 健康保険・厚生年金・雇用保険は重なる期間の扱いが別にある。年金機構・ハローワークの案内で確認する
  • いちばん確実なのは、入社日を退職日の翌日以降に置くこと

在籍が重ならなければ、この論点はほとんど消えます。日付を1日ずらせるかどうかを、先に確かめてみてください。

出典(すべて 2026-09-07 に確認)

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