退職代行は「運営元の適法性」で選ぶ|2026年の事件からわかる見極め方
2026年に入り、退職代行業界で見過ごせないニュースが続きました。ある退職代行サービスの運営会社の代表者らが弁護士法違反の疑いで逮捕され、その数か月後には提携先の弁護士にも有罪判決が言い渡されたのです。「今使っているサービス、大丈夫だろうか」「乗り換えるなら、次はどう選べばいいのか」——そう考え始めた人も少なくないはずです。
この記事では、報道された事実を日付と出典つきで整理したうえで、退職代行を選ぶ・選び直すときに効く**「運営元の適法性」**という軸を中立的に解説します。特定のサービスの実名を挙げて論評するものではなく、法律上の枠組みと、実際に何が起きたかの事実整理に徹します。
この記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。記載している逮捕・判決に関する内容は、各報道機関が報じた時点の情報です。判決が確定するまでは推定無罪の原則が適用され、当サイトとして個別の対象者・企業の有罪性を断定するものではありません。個別の事案については弁護士など専門家にご確認ください。
2026年に何が起きたか(報道された事実)
まず、時系列で事実を整理します。
- 2025年10月22日:退職代行サービスを運営する企業と提携先の法律事務所に弁護士法違反の疑いで強制捜査が入ったことを受け、東京弁護士会が退職代行サービスと弁護士法違反に関する注意喚起を改めて公表しました。「使者」として退職の意思を伝えるだけなら弁護士資格は不要だが、その範囲を超えて交渉に踏み込んだり、金銭を受け取って法律的な問題の処理を他者へあっせんしたりすることは非弁行為にあたる、との見解が示されています。
- 2026年2月3日:警視庁が、退職代行サービスを運営する企業の代表者らを弁護士法違反(非弁提携)の疑いで逮捕したと報じられました。報道によれば、2024年7〜10月ごろ、公務員や給与未払いなどのトラブルを抱えていた利用者6人を、提携先の弁護士に有償であっせんし、1人あたり1万6,500円の紹介料を受け取っていた疑いがあるとされています(時事通信、東京商工リサーチ「TSRデータインサイト」など)。
- 2026年6月5日:東京地裁が、提携先弁護士に対し、弁護士法違反罪などで懲役1年6か月・執行猶予3年の有罪判決を言い渡したと報じられました。報道によれば、判決で認定された対象は2023年6月〜2025年1月の利用者約85人分とされ、逮捕時に報じられた容疑(利用者6人・2024年7〜10月)より広い範囲に及んでいます。判決が確定すれば弁護士資格を失うとされています(日本経済新聞など複数媒体)。
なお、逮捕された運営会社の代表者ら本人については、本記事作成時点(2026年7月)で判決は出ておらず、報道によれば判決期日は2026年8月28日に予定されています。逮捕・起訴はあくまで容疑・審理の段階であり、有罪が確定した事実ではない点にご留意ください。
この事件が示す、もう一つの非弁リスク「非弁提携」
退職代行の非弁行為リスクというと、多くの解説記事では「民間業者が会社と直接"交渉"してしまうケース」(弁護士法72条違反)が中心に語られます。当サイトでも運営元タイプの違いや退職代行は違法じゃない?で、このパターンを詳しく解説してきました。
しかし今回の事件で問題になったのは、それとは少し違う**「非弁提携」**というパターンです。弁護士法27条は、弁護士が資格のない業者から事件の周旋(あっせん)を受けたり、名義を利用させたりすることを禁じています。今回のケースで報じられているのは、退職代行の運営会社(資格のない業者側)が利用者を提携先の弁護士にあっせんし、その見返りに弁護士側から紹介料を受け取っていた、という提携の形です。
つまり非弁リスクには、①業者自身が交渉してしまうパターンと、②業者が報酬と引き換えに弁護士へ送客するパターンの、大きく2つがあるということです。②は「弁護士が関わっているから安心」と見えやすい分、利用者からはかえって気づきにくいという特徴があります。運営元の情報が明確で、料金体系が分かりやすいサービスを選ぶことが、どちらのリスクを避けるうえでも共通の防御線になります。
東京商工リサーチ調査に見る、企業側の警戒感
この問題は、利用者側だけでなく、退職を受け取る企業側の警戒感としても数字に表れています。東京商工リサーチが2026年4月に実施した調査(有効回答6,425社、2026年3月31日〜4月7日実施、4月15日公表)によると、次のような結果が出ています。
- 退職代行から連絡を受けた経験のある企業4,105社のうち、「非弁行為が含まれる可能性があるため取り合わない」と回答した企業は1,248社(30.4%)
- 退職代行から通知を受けた411社のうち、「退職意思の取次のみ」の範囲を超えて、残業代請求や退職日の調整など非弁行為に触れうる内容を含んでいた通知は125社(30.4%)
企業側が「非弁行為の疑いがある通知には応じない」という姿勢を強めているということは、運営元の適法性があいまいなサービスを選ぶと、会社側の対応が硬化し、話がまとまりにくくなるリスクが利用者側にも及ぶ、ということでもあります。適法性は単なる法律論ではなく、退職をスムーズに進められるかどうかに直結する実務上の論点になっています。
乗り換え・見直しを検討するなら、確認したい3点
「今のサービスのままでいいのか不安」「乗り換えるなら何を見ればいいのか」という人は、契約前に次の3点を確認してください。
- 運営元情報が明確に示されているか:労働組合運営なら組合名、弁護士運営なら法律事務所名がはっきり分かるか。運営元タイプが曖昧なまま「交渉もできます」とうたっている先は注意が必要です。
- 対応範囲が運営元の権限と一致しているか:民間企業型なのに交渉までうたっていないか、説明と料金に矛盾がないかを確認します。
- 料金の内訳と、弁護士への紹介・あっせんの有無:弁護士への紹介や連携がある場合、その位置づけや費用が明確に説明されているか。不明瞭な追加費用や紹介料の仕組みがないかも確認しておくと安心です。
非弁行為以外にも起こりやすいトラブルの類型は退職代行で後悔しないためにで整理しています。見直しの結果、今の契約を解約するかどうかは、既存の契約条件(返金保証・解約条件)とあわせて個別に判断してください。
運営元タイプ別、改めておさらい
適法性を軸にした選び方の基本は、運営元タイプの違いで解説している3タイプの整理がそのまま使えます。
| 運営元タイプ | 権限 | できること | 料金の目安(税込) |
|---|---|---|---|
| 弁護士 | 代理権 | 意思伝達+交渉+未払い請求+訴訟対応 | 50,000〜100,000円 |
| 労働組合 | 団体交渉権 | 意思伝達+退職日・有給・未払い分の交渉 | 19,800〜30,000円 |
| 民間企業 | なし(伝達のみ) | 意思伝達のみ(交渉は不可) | 10,000〜30,000円 |
交渉が必要かどうかを先に決め、その権限を持つ運営元を、情報が明確な先から選ぶ——この順番は、通常の選び方でも非弁リスクを避ける選び方でも、行き着く結論は同じです。料金の相場感は料金相場と選び方、総合的な比較はおすすめ比較ランキング、実際のサービスを横並びで見たいときはサービス比較一覧で確認できます。
退職の意思を固めたら
運営元タイプを決め、退職の方向性が固まったら、次に必要になるのが退職の意思表示です。自分で退職届を用意しておきたい場合は、退職届テンプレートで会社名・所属・氏名・退職日を入力するだけで標準文面を無料作成できます(入力内容はブラウザ内のみで処理され、サーバーには送信されません)。退職代行を使う場合も、あわせて自分の退職届を用意しておくと、やり取りの行き違いを防ぎやすくなります。
まとめ
2026年の一連の報道は、「退職代行そのものが危ない」という話ではなく、運営元の適法性を確認しないまま選ぶことのリスクが、現実の事件として表面化したという出来事だと言えます。
- 2025年10月に東京弁護士会が注意喚起、2026年2月に運営会社代表らが弁護士法違反(非弁提携)の疑いで逮捕、6月に提携先弁護士へ有罪判決——という経緯が報じられています(いずれも判決確定前・推定無罪の原則が適用されます)
- 非弁リスクには、業者自身が交渉するパターンだけでなく、報酬と引き換えに弁護士へ送客する「非弁提携」というパターンもある
- 東京商工リサーチの調査では、企業の30.4%が非弁行為の疑いがある連絡には応じないと回答しており、適法性の低さは実務上の手詰まりにも直結する
運営元タイプの権限を理解し、情報が明確な先を選ぶこと。これは以前からの基本ですが、2026年の一連の事件は、その基本の重要性を改めて裏づける出来事だったと言えます。「退職代行はやめとけ」という声の中身が気になる人は、「退職代行はやめとけ」と言われる理由もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. このニュースがあった以上、退職代行を使うのはもうやめたほうがいいですか?
いいえ、そうとは言えません。今回問題になったのは特定の運営会社の行為であり、退職代行という仕組み自体が違法というわけではありません。退職の意思を伝えること自体は労働者の権利であり、運営元の適法性を確認したうえで選べば、引き続き有効な選択肢です。
Q. 今契約しているサービスが心配になったら、どうすればいいですか?
まずは運営元タイプ(弁護士・労働組合・民間企業)と、契約している範囲(伝達のみか、交渉まで含むか)を契約書や公式サイトで確認してください。不明な点があれば、サービスの窓口に直接問い合わせるのが確実です。解約や乗り換えを検討する場合は、返金保証・解約条件もあわせて確認してください。
Q. 逮捕された会社やサービス名を教えてもらえますか?
当サイトは編集方針として、個別の会社名・サービス名を挙げての評価や名指しを行っていません(詳しくは編集方針をご覧ください)。今回の件は複数の報道機関が実名で報じている公開情報のため、関心のある方は検索すると経緯を確認できます。当サイトが重視しているのは、どの1社が問題になったかより、同じ構造のリスクが他の運営元でも起こり得るかを、運営元タイプの枠組みで見極めることです。
Q. 労働組合運営タイプなら100%安全と言えますか?
団体交渉権にもとづく交渉は合法にできますが、100%リスクがないと保証されるものではありません。組合ごとに対応範囲やサポート体制に差があるため、加入条件や運営元情報の明確さは個別に確認することをおすすめします。
Q. 民間企業運営タイプは、もう選ばないほうがいいですか?
一律に避けるべきとは言えません。争点がなく「意思を伝えるだけでよい」ケースでは、民間企業型でも足りることが多いです。ただし交渉が必要になりそうな場合や、運営元情報が不明瞭な場合は避け、労働組合・弁護士運営タイプを検討してください。
退職後の給付金(失業給付)について
運営元タイプを問わず、退職代行は失業給付の申請を代行できません。 失業給付(雇用保険の基本手当)の申請は、退職後にご本人がハローワークで行う手続きです。受給の可否・金額・時期はご自身の状況により異なり、当サイトおよび各サービスが受給を保証するものではありません。
当サイトは制度の概要を情報として紹介するにとどめ、申請代行は行わず、情報提供のみとします。具体的な対象可否や手続きは、ハローワークなどの公的機関や、社会保険労務士をはじめとする専門家にご確認ください。